#038 紅葉の仕組み

■１■日本では毎年秋になると見ることができる｢紅葉｣だが、実は地球上ではとても珍しい現象である。木々が紅葉するのは地球の北半球の温帯地域の一部、つまり日本・中国・韓国などの東アジア諸国、北米大陸の東部、ヨーロッパだけだと言われている。そしてこれらの地域には落葉樹が多く生育している。

■２■紅葉という現象が起こるのは落葉樹のみである。落葉樹は秋になると越冬準備のために葉に貯めた養分を樹木の本体に回収して貯蔵した後に、全ての葉を落としてから冬眠状態になって冬の厳寒を乗り切って春を迎える。紅葉とはこの落葉樹が葉を落とすのに必要な準備を進める過程で起こる現象である。

■３■養分回収のために光合成機能を停止することで葉緑素が減っていき、その過程で有害物質が生じてしまう。それらの有害物質を抑えるために合成されるのがアントシアン(赤色)やフロバフェン(茶色)という色素で、このため葉の色が変わる。最低気温８℃以下で始まり、５〜６℃以下でさらに紅葉が進む。

■４■多くの葉にはクロロフィルの他に、カロテノイド(黄や赤に見えるカロチン類やキサントフィル類などの色素)があるが、クロロフィルが多い時は緑に隠れて見えない。だがクロロフィルが減って緑色が薄まると元から葉にあった別の色素の色が目立つようになる。イチョウなどで起きる黄葉はこれが原因だ。

■５■またブナやケヤキなどでは、葉の中でタンニンが増えることで濃い茶色(褐色)が目立つようになる。タンニンはお茶に含まれることで知られる物質で、その元となる物質は多くの植物が持っている。これが葉の老化とともに酸化などの化学変化を起こして、褐色のタンニンになるが、これを褐葉とも言う。

■６■欧米における紅葉は黄色が主体だが、日本は紅葉する樹木の種類が多彩なため、元から紅葉しない緑の葉から赤や黄色、山吹色、臙脂色、褐色などの鮮やかなコントラストがいっぺんに楽しめる。 また寺院や神社、古民家といった和風建築と調和する日本ならではの情緒的な独特の風情があると言われる。

--------------------------------------------------------------------------------------- (※) 画像<1>「kkday」、<2>「IN NATURAL STYLE」より借用・加工。

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