■１■今世紀初頭、旅する占星術師のるしえる兄ぃと彼の愛車赤い流星号で北海道を旅した時のことだ。帯広から阿寒湖に行く途中、本別で蕎麦屋に入った。蕎麦好きの彼はその味に感動して、店主を呼んで｢美味かった｣と伝えていた。その時私に｢蕎麦の実は正４面体の形をしているんだよね｣と教えてくれた。
■２■その時見たのは収穫後の殻が付いた状態の蕎麦の実だったが、確かに角張った３角錐の実は４面体としても見て取れる。各地の弥生遺跡から稲と共に蕎麦の花粉も検出されている。蕎麦は穀物括りだが、穀物の多くはイネ科(単子葉類)なのに対して蕎麦はタデ科(双子葉類)であり｢擬穀類｣と呼ばれている。
■３■水田平子という名は日本人女性の漢字名ではない。ミズタビラコとは、<Trigonotis
brevipes>という学名を持つムラサキ科キュウリグサ属の多年草の名だ。本州･四国･九州の山地の水辺や湿地などに生育し、５〜６月に白く小さな花を咲かせる｡ここで引き合いに出したのはこの実も４面体になるからだ｡
■４■５枚の花弁の下の果実が４分果なのは意外だが、このそれぞれが３角錐となり、幾何学的に完全な正４面体とはいかないものの、これほど正４面体に近い形状なのは珍しい。３軸直交の３次元世界では、４軸直交を有する正４面体形状の生物は存在しないと考えていたが、実はこのように幾つか存在する。
■５■ヒシはミソハギ科ヒシ属の一年草で水面に浮く浮葉植物だ。池沼に生え、種子は食用になる。名前は多面体でいう菱形の｢菱｣の字だが、個人的にはこの種子はむしろ昔の漫画で見たマキビシのイメージが強い。形が正４面体構造なので常にトゲが上を向くので、忍者が追手から逃れるために撒いたあれだ。
■６■忍者は敵の足を止める小道具として、この実を集めて乾燥させたものを竹筒に入れて携行したという。またこれは長時間潜伏する際の非常食ともなったそうだ。日本では縄文時代から食しており、生食もできるし薬膳にもなっていた。うーん、今後はもっと自然に触れ、植物の形をよく見てみようと思う。
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(※)画像01
｢吉粋｣ https://kissui.co.jp/m03313/ より借用。
(※)画像02
｢ふふりりお｣
http://ffrro.seesaa.net/article/467864715.html より借用。
(※)画像03
コオニビシ ｢サバイバル節約術｣https://survivalnature.sakura.ne.jp/0000/01_grass/hishi/0000.html
より借用。
20251121
Friday
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