■１■長楽寺動物霊園から｢みかん｣の一周忌の連絡がきた。みかんは去年他界したキジ猫白の猫の名前だ。黒猫デルピーと共に2003年に京都の白石さん宅から貰い受けてきて、当家で20年間生きた。去年の11月13日が命日と書いてある。車で行き来していた長楽寺の住所が、名鉄桜駅近くなのに改めて気付いた。
■２■猫々ハウスで保護していた猫たちのス−、テン、そして最後の１匹になったハナも、前後して保護していた黒猫の桃ノ介、梅太郎もこの動物霊園に納骨した。寺や墓地に生前の魂が残るとは思っていないが、個人的不注意から遁走してしまったデルピーやシロも、想起の焦点として施設の存在は有り難い。
■３■テンの命日も2022年の11月17日だった。だから今日の未明歩行は追悼供養のためにその長楽寺動物霊園に行く。個人的な自己満足だと言われても、そもそも１日一万歩もひとりよがりだ。午前４時30分、御器所駅交差点から南下。路面が濡れている。５時から雨が降るとの予想だが、ひと雨降ったらしい。
■４■もの心ついた頃から身の回りにはずっと猫がいた。何匹もこの手の中で見送った。今後は自分が何時くたばるかしれないので、もう新しく猫は飼えない。今いる白猫クウと黒猫カイが最後だろう。瑞穂運動場西、ちょうど５時だ。3500歩。情緒が飽和しマヒしている。こんなにエモい未明歩行は初めてだ。
■５■｢猫を愛するように人間を愛せたら｣…個人的なテーマだが、人間は分かり合えるところが多すぎて逆に難しい。すでに鬼籍に入った人たちや２度と会わないであろう記憶の中の人たちにはすでに感謝しかない。これからもまだ会う人たちには感謝以上の何かがある。未知と既知との間の何かが確かにある。
■６■暗い街並みを急がずに歩く。後ろに流れ行く景色がバーチャルのようだ。仮想世界に没入するVRゴーグルと、現実世界にデジタル情報を重ねるAIゴーグルがある。言語化も視覚化も大切だ。しかし個々人の意識や記憶の中にしかない、言語化や視覚化以前の状況や感覚は、未だデジタルでは再現できない。
■７■下を地下鉄桜通線が走る名古屋環状線をひたすら南下する。桜本町交差点を右折し、400ｍ先を左折して約200ｍ進むと長楽寺動物霊園前に出た。５時33分、6800歩。徒歩１時間で来られるのか。暗いけれど全然怖くはない。中に入るのは憚られたので、動物観音の前でしばし佇んでから前の道を直進する。
■８■近所の家の中からだろうか、突然猫の鳴き声がする。木々の生い茂る冨部神社を経て呼続公園に入り、広い緑地部を巡っているうちに、いつの間にか新郊中学校のグラウンド内に迷い込み、フェンスの外に出られなくなる。いつものお約束かよと焦りつつ、何とか敷地の外に出て動物霊園前に戻ってきた。
■９■祈りという定義もよく知らぬまま、勝手に色々祈ってから帰路に就く。桜本町に着く頃、ようやく雨が降り始めてきた。６時23分太閤通行きに乗り、御器所に出ると雨は止んでいた。家に辿り着いたらまた雨が落ちてきた。晴れ男だな。運が良い者は感謝の念を欠かさないとか。世界に猫がいて良かった。
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(※)御器所から呼続へと書いても、関東にいた自分なら「ゴシショからヨビツヅケへ」と読んだだろうな。「ゴキソからヨビツギへ」と読めるのは名古屋人だけとか。
(※※)｢呼続｣の地名は、熱田・宮宿から出航する渡し船が、人から人へ「船が出るぞ」と声を呼び継いだことに由来するらしい｡
(※)呼続公園一帯からは縄文時代晩期の竪穴建物が見つかっており、周辺からは土師器や須恵器が出土している。
20251109
Sunsday
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