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■１■目覚めは３時。学生の頃、１日約１時間ずつ目覚めが後ろにずれていく時機があった。我々も毎日陽光を浴びないと生活の位相が後ろにずれていく。当時はこれを世界時差に当てはめて面白がっていたが、ブエノスアイレス時間、つまり時差12時間が前に合わすか後ろにずらすかの調整が一番難しかった。

■２■年を取ると今度は逆に１日ごとに目覚めが早くなる。４時から５時頃に雨が降るとお天気アプリが告げている。今日も名古屋方面に歩くのだが、吹上まで行けばそこからは名古屋高速２号の高架線の下を行けば傘を差さずに済むのではと考えた。行ってみたら何だよ、あちこち工事中で立入禁止だらけだ。

■３■まあ両側の街路樹のおかげでかなり傘をささずに済んだので、ずっとハイペースで歩き続けられた。そして堀川にぶち当たる。ここまで来れば名古屋駅はすぐだ。しかしまだ４時半前だ。ここで急遽進路を北転する。堀川に沿って名古屋城に向かうのだ。やはり水際歩きは好きだ。水面に雨の降りそぼつ。

■４■目的の定まらない徘徊遍路。いやお遍路は同行二人か。どうぎょうににんと読むのか。別に弘法大師が一緒じゃないけれど、無人の暗い街の一人彷徨は結構気に入っている。ＢＯＢのプレオコツト時代は｢泣きながらラッキー｣が合言葉だったが、今は笑いながらラッキーだ。言葉は変わらず意味が変わる。

■５■この辺の堀川沿いの小道はかなり好きだ。途中川の見えない地区を歩いた後、名古屋城のお堀の南西端に着く。実は堀川自体はお堀に直接接してはいない。堀の西北端を迂回してそこから三階橋取水場まで北東進する。日の出の兆しすらまだ見えない暗い空を背景に、堀は異次元との境目のように見える。

■６■後ろから足音がしたので横に逸れて道を譲ると、｢お早うございます｣という声が左脇を通り過ぎていった。早朝ランニングの人だ。はっと人間界に引き戻され、丁寧に挨拶を返した。振り向けば堀を挟んでこれも城かと勘違いしそうな。今月１日に新装オープンしたエスパシオナゴヤキャッスルがあった。

■７■時計を見ると５時12分。まだ始発には早すぎるので、最寄りの浅間駅でなく１つ先の浄心駅まで歩いた。ゆっくり着替えてホームに入ると思ったより客がいる。当駅始発の豊田行き５時37分。御器所に着く。環世界はまだ日の出前だ。一人南太平洋のキリバス時差のままだ。しっかり太陽を浴びなくちゃ。

20251020 Monday