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■１■４時半、今日の未明歩行は徘徊爺ぃの体で行くことにした。爺ぃは日本語が好きだ。爺ぃは飛び飛びに色々考える。日本語は理と情が分れていない。｢人間｣と書いてジンカンと読ませると世の中・人間社会という意味になる。ニンゲンと読むと関係性を重視した人の間という名称から人物や人間性を指す。

■２■人の間でなく｢人｣となると人類や世間を指し、個人や他人や人格となる。｢ヒト｣だと人間の生物学上の標準和名でホモ・サピエンス・サピエンスを指す。ヌース理論(ヌーソロジーではない)の言うヒトは、個と種が分離しない言葉なのではなかろうか。また知と情が分離しない言葉を用いるのではないか。

■３■イルカでも猫でも雀でもオニヤンマでも、全てに｢～のヒト｣と呼ぶ人がいた。人間が見る世界は人間の環世界であり、他の生物はその生物なりの異なった環界がある。人間から見た雀は人間の環界で捉えられた雀であり、共通世界での人間と雀ではない。それを考慮しての｢雀のヒト｣と表現し接している。

■４■もちろん植物でも非生物でも構わない。電柱のヒト、信号機のヒト、暗い路地裏のヒト。人のいない街中を歩くとき見える全てがヒトである。その中を滑るように移動する自分自身の体と知覚。殆ど知らない自分の体に対しても感謝を込めて体のヒトと呼んでみる。今日も徘徊に付き合ってくれて有難う。

■５■直角でない分かれ道に出くわすと嬉しい。右に行こうか左に進もうかと体に相談する。なぜなら我々は我と我で一心同体だから。体を介さない知的な概念転がしは好きではない。知に走り過ぎて情がない。日本語は情を分離した知を記述するものではなく、知と情が共に立ち上がり一つ言葉で際立たせる。

■６■情の知を知らないから知の情も自覚できない。体の言葉や情の言語という物言いを単なる比喩表現としてしか捉えられないのは不憫だ。セントラルパークを超えて栄に入る。眠らない夜を過ごす人達がどっと増える。カラスの数も多い。｢社長、どう？｣と交差点で声掛けられる。すまんの金もない爺ぃで。

■７■ヒトとしてヒトのなりでヒトとしてジンカンを歩く。カラスのヒトが全てお見通しのような目で街を見ている。名古屋駅に近くなってきたので１万歩の調整しようとスマホのアプリを見た。０歩。えーっ、カウントなし？開始と停止のボタンに初めて気づく。何かショック！今朝の歩きは無駄になったの？

■８■いやいや数は目的でなく目安と自分で言っていただろう。体のヒトは動じない。自らの内に記録が残っているから。万歩計アプリのヒトとの間に少し齟齬が生じただけだ。しかし徘徊老人モードだからどこか腑に落ちない。６時前の名古屋駅に着く。６時20分の新幹線始発を改札で待つ人達が増えてくる。

■９■えーい、いっそヒトでなしになったろか。ＢＯＢが昔｢マロちゃんはヒトでなく天使モドキ｣と言ってたことを思い出した。モドキって偽物まがい物のことだよね。え、道化役の意味もあるの。道化ならまいっか。スマホのヒトに丸め込まれる爺ぃだった。爺ぃのヒトは地下鉄桜通線に乗って帰路に就く。

20251014 Tuesday