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■１■夜明け前､気が付けば既に歩行用に着替えている。｢昔は瞑妄想に用いていたこの時間に、今はなぜ歩くのか？｣｢歩きながら考えるために。｣｢何を考えるのか？｣｢未知なる未来について。｣｢知は共有できても、未知は共有できない。ましてや未知なる未来は自分でも掴めない。｣｢…それを模索するために。｣

■２■毎日新しい１万歩目指すべく、今日は文庫本サイズの名古屋詳細地図を手に持つことにした。普段より１本２本裏道を歩くために。ただし地図を見っ放して地図の上を意識が歩くようなことはしたくないので、ある程度歩いてからルートと現在地を確認するのだ。地図はAIで現地が人間。二択でなく両得。

■３■東雲という漢字としののめという読み方のあわいにある日本語空間が好きだ。競技場が幾つもある瑞穂運動場エリアに入ると、スタジアムの楕円に沿って歩くので方向感覚を狂わされる。しかしこの時間は沈み行く月と明け行く空が方向を見失わせない。並木道の樹上でツグミが激しく鳴き交わしている。

■４■裏道を辿り進んでいたら幹線道路にでた。名古屋市の広い道は中央分離帯があって道を横切れない。仕方なく迂回して信号のある横断歩道を渡る。地図の力でいい感じで最短に近いルートを進んでいると、突然坂道が出現した。いや地図だと最短だけど、これでは体力が…。地図読みには直観力も必要か。

■５■月が沈み朝日が雲に隠れて世界が薄いピンクに染まりかける頃は方向感覚が狂う。天白川の平子橋を渡り、鳴子北駅を目指していたら案の定道に迷った。突然畑や森が多い田舎道になり、どんどん山の中に入っていく。地図上の道をロストして、眼前の道を直感で進む。これが未知なる未来なのか。違う！

■６■描き残されたものの背後にある無数の描き残されなかったものたち。それらをどれだけ拾い上げられるかは、量子コンピュータの未来に託される。現今の生成AI画像は、実数部しか見えなかった複素数同士の積算により、新たに実数化した領域に過ぎない。世界がそれに満ちたら直ぐに次の審美眼が開く。

■７■散歩中の老人に｢おはよう｣と言われてハッとする。歩きながら脳は概念世界を彷徨していた。これが未知なる未来の片鱗なのか？ちょっとだけそうかも。最後は迷徘徊したけれど、結局大回りして１つ前の野並交差点に出る。初見の道ばかりで満足の１万歩だった。桜通線で帰路に就く。…まだ７時前だ。

20251010 Friday