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■１■マヤの還暦52年を迎えた時某綿棒多面体アーティストが、自らの体のことを｢中古車でもしっかりメンテすればまだまだよく動く｣と言っていたけれど、午前４時台の動くものがほぼ何も見えない闇の帳の中で眠る街中、滑るように歩く自らの身体が心地よい。静止した空間が自らが動くことで流れて行く。

■２■視覚は己の体の動きに連動せずに動くもののみを捉える。今時自転車に乗ってゆっくり新聞配達しているのは、どこでも老人ばかりだ。遠くでカラスが鳴き交わす。体が五感の他にも何か知覚しようとしているが叶わない。思考でも情動でもない何か別のものが体の中で転がっているようだが自覚し難い。

■３■他者がいない未明の街で、自らの体の外側に流れ行く景色と内側の自分自身が重なって区別がつかない時がある。｢未来は体の内からやって来る｣というフレーズが浮かぶ。体とは何か？眼前の景色と身体の内側は今、闇で繋がっている。体とは闇かと自らに問う。そして問うとは何かと問う自分すらいる。

■４■都市の通奏低音が遠い慟哭のようにも思える。５時を回った無人の大須商店街を抜けると、ようやく人の姿がちらほら見えてくる。人が視野に入ると自分の世界も変わる。目前の世界を幻だとか誤認識による世界観だとか、一方的に蔑ろにしつつ高次の世界を推奨する前に、まずは世界をしっかり見たい。

■５■日本語の言語空間の豊かさ。現今の日本人の多くは、特に憧れる国がないと言う。その日本で目の前の世界をそのまま眺められることの有難さ。何かに対してではなく何事にも感謝したい。街は明るくなり、名古屋駅では多くの人が新幹線始発の改札が開くのを待っている。ああそうか、今日は日曜日か。

■６■良かれと思って練りに練ったフレーズを相手めがけて意図的に放つより、他者の何気ない一言がいつまでも心に残ることがある。何年もたってから当人にそのことを言っても、大体忘れ去っている。それフレーズが意味や価値を持つのは、聞いた者のみの問題ではなく、多重多層の日本語空間だからかも。

■７■駅に出たから特に何かをしなくてはということもなく、その場の人々の笑顔を有り難く鑑賞してから地下鉄で御器所に戻る。十字路の猫は今日もいなかった。自販機の後ろに玄関があり、そこの小さな門が開いていた。この飼い猫なのかもしれない。日曜の朝、午前７時台前半。曇り空が薄く紫色してる。

■８■風邪気味でも普通に未明の１万歩はこなしている。帰宅後の体のメンテの一部として入浴はマストだったが、最近では素直に心地良さを味わっている。いつまで続けるのかすら不明だが、自らに課した日々のノルマだったら逆にしんどいだろう。自分の体に感謝し、感謝する自分に感謝する｢何か｣がいる。

20251005 Sunday