■１■元々極東の島国であった日本で使われていた日本語は、地理的にも世界的に自然な鎖国状態の言語だった。また先の大戦後に設立された国連の公用語は､戦勝国である中･米･英･仏･露の言語である中国語･英語･フランス語･ロシア語で始まり、後に話者が多いスペイン語とアラビア語が加えられた６言語だ。
■２■当然ながら敗戦国である独･伊･日の言語は現在に至るまで、国連の公用語には入っていない。日本語は欧米中心だった世界視座においては｢逆｣鎖国言語状態だった。今でこそアニメや漫画、映画や文化や技術等に魅せられて日本語を学ぶ者が増えたが、習得難役度が最高ランクであることに変わりはない。
■３■植民地政策その他の要因により英語が世界共通語になり、コンピューターの元となるプログラム言語や、今では世界を覆うインターネット空間も英語的思考と論理をベースに展開した。しかし日本語の言語空間はそことぴったり重ならないまま、PCやスマホの文字も含め独自の進化をしている部分がある。
■４■そもそもアルファベット言語圏で用いる英数文字は基本的に半角だったが、日本語は通常文の中でも漢字･カタカナ･ひらがなを用いているので全角文字を必要とした。今でこそ可変幅フォントも普通にあるが、基本的にPC上の文字では全角が２バイト(中国･台湾･韓国語も同様)、半角は１バイトを用いた。
■５■欧米では基本的にアルファベットと英数しか使わないので､日本のJISキーボードでは当たり前の半角／全角キーがない。キーボードの組み合わせで切り替えは可能だが、日本語IME(Input
Method Editor)をインストールすれば、同様の操作はできる。音声入力の更なる進化でこの差異は縮まるのだろうか。
■６■インターネットは英語的概念で作られており、英語は世界的な共通言語だったので、ネット上のコンテンツの多くを占めていた。しかしAIの加速度的な発達により瞬時翻訳の精度も上がり続けており、いずれネットは英語中心でなくなると予想されている。残る問題はハイとローのコンテクストの格差だ。
■７■日本の高文脈文化とその言語空間をAIは高く評価し、自らを構築するロジックの中にはないので恐れてもいる。いずれAIはこのコンテクスト間の差異を滑らかに埋めていくだろう。それでも虫の音が聞こえる者と聞こえない者のように、人間同士の文化的背景の差異によるギャップは簡単には埋まらない。
■８■しかしこれは｢?啄の機｣でもあろう。孵化しようとするヒナが卵の内側から突く｢?｣と、それに呼応して親鳥が外から殻を突く｢啄｣により生れるというあれだ。個人的には現在がその時で、低文脈文化の共通語で英語が残ったとしても、高文脈文化としての共通言語が日本語になる未来を妄想像している。
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画像<1>左「LanguageVillage」、右「exciteニュース」より。画像<2>左ウィキペディア、右「有限会社今村組」より。画像<3>左「東洋経済online」、右「ゼロワンアース」より。
20250509
Friday
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