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■１■枇杷島の地名は、藤原師長と村長横江の娘との悲しい別れに由来することは既に見たが、瑞穂区にある妙音通りも師長の戒名｢妙音院｣に由来すると知り、駅名も同じ名城線の妙音通で下車した。法華経妙音菩薩品第二十四にも出てくる妙音は一般に音楽の神様だが、琵琶を持つ弁財天とも重ねられもする。

■２■地上に出てすぐの信号を200ｍ程北上すると､師長が出家して｢理覚｣と称したという亀井山龍泉寺がある。これは守山区の｢竜泉寺の湯｣の傍にある寺院とは別で、開基は行基開山の真言宗薬師寺だが諸々の経由があり、現在は曹洞宗となっている。｢師長公画像｣や｢師長公記｣(二巻)もここに所蔵されている。

■３■内部はさほど広くはなく、１回りしてから入り口横の｢亀井水｣だけ見てきた。ここは源頼朝の産湯の水を汲んだ井戸とも言われているが、それはまた別の話になろう。この妙音通駅前の信号から反対側に南進するとすぐ右手に嶋川稲荷があり、その敷地の中に師長小史と共に藤原師長謫居址の碑があった。

■４■さらに少し進むと山崎川に出て、パステルグリーンの人道橋の師長小橋があった。下流80ｍ程のところで名鉄本線が音を立てて渡って行く。すぐ先に呼続駅がある｡逆に上流に180ｍほど進むと車も渡れる師長橋があった。こちらの橋桁は薄桃色だ。現地の若い子はこの名前の由来を知っているのだろうか。

■５■さらに800ｍほど上流に歩くと､妙音通と山崎川が交差するところに落合橋がある。この橋の名前はあの枇杷島の名の由来に繋がる、師長と横江氏の娘が待ち合わせたことから来ているという。橋の近くには２人を思わせるモニュメントがあった。２人は山崎川上流の左右田橋辺りの丘に行き琵琶を奏でた。

■６■…てか､あれ？今年も山崎川の花見をしたばかりなんだけれど､あの桜並木は石川橋から落合橋まで続いているんだよね。そしていつも左右田橋をまで来てから対岸に渡って引き返すのだが。あれ、左右田橋から下流東岸に瑞穂スタジアムを挟んで、藤原師長の名に由来するという｢師長町｣もあるんだけど。

■７■ついさっきまでは山崎川の流れの中にいる白鷺を見て、師長たちもこの白い鳥を見ていただろうかと遠い話と捉えてたのに、この師長町には師長がよく琵琶を弾いたという｢琵琶ヶ峰｣もある。さらに公式の資料に師長町が昭和12～19年まで当家のある昭和区だったとある。どんどん身近に食い込んでくる。

■８■名古屋の主な川同様、この山崎川も河口の名古屋港まで歩いたのだが、３次元的な上下方向とは全く別の、最初からそこにあった未知なる歴史として意識に直交して来るので、初めての２度目とはまた別の全く新しい未知へと上書きされていく。全く新しい領域に入ったのだろうと解釈する。…楽しみだ。

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(※)画像<3>右と画像<4>右は「eggman-movers」　より借用・加工しました。

■９■そもそも特に歴史好きではないので、藤原師長の名を｢もろなが｣と読むのも知らなかったのだが、少年ジャンプ連載中の松井優征氏の『逃げ上手の若君』に出てくる足利尊氏の執事・高師直(こうのもろなお)と弟の師泰(もろやす)を知っていたので読めたわけで、アルキニストも様々に繋がっているな。

■10■ネットで名城公園の｢藤の回廊｣を見た。全長660ｍ､棚面積3300ｍ2､９種類85本。地下鉄に飛び乗った。一瞥で脳内リアクション。｢しまった､遅きに失した！｣既に盛りを過ぎて花が実に移行中。取り敢えず一巡りする｡久しぶりのお堀越しの名古屋城。来年は時を見誤らずに来て城と藤の対比をぜひ見よう。

20250504 Sunday