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■１■庄内川の治水も手掛けたことのあるオランダ人技師デ・レーケが、全長56kmだが標高差が約3000ｍもある富山県の常願寺川の工事を開始する前に､｢これは川ではない､滝である｣と言ったという話は有名だが、日本列島の川は大陸の様々な大河と比較すると、標高差を短い距離で流れ下るために急流で速い。

■２■また日本は流域面積も狭いので、雨が降ると水が一気に川に集まり増水する。通常時に対して増水時の水量比を見ると、英国のテムズ川で平常時の８倍、ドイツ近隣を流れるドナウ川で４倍､米国のミシシッピ川で３倍ほどだが､近畿の淀川は30倍、中部の木曽川は60倍、関東の利根川だと100倍にもなる。

■３■洪水時の川の水面より低い土地のことを、専門用語で｢洪水氾濫域｣と言う。河原や堤防を歩いているとよく分かるが、都市部の多くの地域がこれに相当する。国土交通省によるとその面積は日本の国土の10％に当たり、ここに日本の全人口の51％が住み、日本の持つ資産の75％が集中しているのだという。

■４■増水しても洪水でも川の水は最終的に海に流出する。垂直方向の基準の１つに海抜がある。海抜とは平均海水面から測った陸地の高さのことだ。平均海水面よりも低い土地は一般に窪地(あち)と呼ぶが、海岸付近で地表の標高が満潮時の平均海水面よりも低い土地のことを｢海抜ゼロメートル地帯｣という。

■５■この語は大学１年の時、江戸川在住の級友に教えてもらった。他にも江東区･墨田区･葛飾区などの荒川両岸地域や湾岸部がこれに該当し、その面積にして124km2の地域に約150万人が生活している。しかし同じ資料により、愛知県の濃尾平野にはそれを遥かに上回る286km2もの該当地があることを知った。

■６■愛知県の津島市､弥富市､愛西市､名古屋市の中川区周辺、三重県桑名市､岐阜県海津市などの中部地区一帯も該当し、集中豪雨や高潮、台風、津波などの水害時に対処するために、堤防や水門、揚排水ポンプなどを整備する必要がある。中川区には義母も住んでいるので、全く人ごとでなく身内ごとだった。

■７■また川の流れが平地より高いものに｢天井川｣がある。堤防を作ると川底に砂礫が堆積し、これに合わせて堤防を高くするということが繰り返された結果、川底が周辺の平面地より高くなった川のことで、中には高くなり過ぎた河床の下にトンネルを掘って鉄道や道路を通す、｢天井川トンネル｣も存在する。

■８■天井川は全国に約240存在するが、周囲の山々が直射日光を受けて風化しやすい花崗岩であり、古くから都城造営や寺社建立のために森林が伐採されて保水能力を失っていた関西にその半分が集中している。海外では黄河下流や長江中流も同様で、ライン川下流のオランダ国土の大部分は河川よりも低い。

■９■ほとんど川が流れないオランダの技師が日本に来て、各地で治水工事を指導してくれたわけだが、急流すぎる川を見て｢滝｣と表現したのも分からないでもない。かつて水平思考と垂直思考等と言われたこともあったが、現今ではどちらも内包した立体思考で、生命と不二の川の流れを支え生きて行きたい。

■10■なお水面が基準の水平に対する垂直方向を示す高さの基準に、｢標高｣とよく似た｢海抜｣という言葉がある。標高とは、東京湾の平均海面を０ｍとして測った土地の高さを表すが、一方海抜は該当地近隣の海面を０ｍとして、そこからの高さを表わす。従って東京湾近隣ではこの２つの数値は同じ事になる。

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画像<2>「国土交通省」、画像<3>「Ｘ;人が死なない防災」、画像<4>「まっぷる」

20250503 Sturday