■１■目覚め時は本当に不思議だ。庄内川のことを色々考えながらベッドから起き上がったその瞬間、｢平作川｣という名前が頭に浮かんできた。高校までを過ごした横須賀にある川の名で、三浦半島最高峰の大楠山に源を発し、浦賀水道に流れ出る三浦半島で最長の川だ。もう一生思い出さないはずの名だった。
■２■名古屋市を流れる主な河川の岸を歩いたが、最後に歩き終えた庄内川が特に好きになっている。だが庄内川自体については何も知らないままなのに気付き調べてみた。この川は昔は流域ごとに異なる名で呼ばれていたが、徳川時代に各庄を流れる川として庄内川と名がついた。まあこれは予想通りだった。
■３■庄内川は、岐阜県恵那市の夕立山(727ｍ)に発し､東濃地方の断層に並行して標高200〜300ｍの丘陵地を流れ、愛知県尾張東部の段丘平地を経て名古屋市北西部を流下し、名古屋港へ流出する。名古屋市北部から下流は低平地が広り、木曽三川が作った濃尾平野の海抜０ｍ地帯に重なる。流路延長は96kmだ｡
■４■庄内川は多くの川同様水質はよく綺麗だった。庄内川上流は美濃焼の産地だったが、明治時代以降量産化が進み、原料や顔料等の陶磁器産業の排水が大量に川に流された。さらに戦後の高度成長期になると流域の各工場からの排水、人口増加に伴う宅地開発による生活排水でこの川の水質は悪化し続けた。
■５■昭和34(1959)年の伊勢湾台風で下流域は壊滅的な被害を受け、漁場が消滅するほどの堤防整理が進められ、同時に市は下水道の整備で川の汚れ防止に乗り出した。外水道には汚水と雨水を下水へ流す合流式と、汚水のみを下水へ流す分流式があるが、未だ多くは合流式で大雨の時等は処理が追い付かない。
■６■堤防沿いや川縁を歩けばわかるが、上流の水は澄んで美しい。しかし川の性質上、上流で捨てられたり流されたりしたものが下流になるに従って河畔に貯まる。市民が整備清掃し続けているが、水質が悪化する前は泳ぐこともできたという河口付近は今、多くの人間の無意識の反映のように混濁している。
■７■日本を訪れた観光客は口を揃えて、日本は着いた空港から既にゴミ１つなく街中は清潔で美しいと驚く。しかし下流の堤防や川岸は投棄されたゴミや自然な流下物が目に付く。構造上、川は様々なものを河口に向って流すが逆はない。河川管理者が街中のように毎日全てのゴミを排除することは不可能だ。
■８■庄内川の流域には多くの生物が生息している。河口付近にはラムサール条約に登録された藤前干潟もある。国土交通省は川の管理だけでなく、親水空間の整備や生物の調査と教育に努めている。しかしそれを他人事でなく自分事として、多くの人の意識により今の街中のように整え支えて行きたいものだ。
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(※)画像<1><2><3>は｢まるはっちゅーぶ｣ より借用・加工。
20250502
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