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■１■川辺歩きばかりしているからだろう、今朝は川を渡る夢を見た。目覚めながら｢ベンセイシュクシュク～、夜川を渡る～｣という詩吟のフレーズを思い出した。小五の時の遊び仲間がある日繰り返し詠っていたものだ。門前の小僧宜しく覚えたものだろうが、今調べたら頼山陽の漢詩｢川中島｣の一節だった。

■２■音だけ覚えていたところは｢鞭声粛粛｣で、上杉謙信が夜中にひっそり川を渡り、敵陣に迫る様子を詠んだものだった。夢の中では川に沿って本来有り得ないガードレールラインがあった。目覚めて違和感を覚えながらも、その夢を言語で他者に伝えることは殆ど絶望的に不可能であることも自覚している。

■３■夢を見るレム睡眠中はMCH神経が海馬の神経活動を抑制するので､目覚める最中からその記憶の残滓を繰り返し強調しながらかき集めて、部分的に再構築する。しかしそのストーリーの揮発性の残り香すら、言語化の最中に失せて行く。だがその過程で、数十年も跨いでの記憶想起の契機になるのが面白い。

■４■海馬は記憶を司る脳の部位だ。記憶はまず短期記憶として海馬に保存され、その後大脳皮質に転送されて長期記憶として保存される。海馬は20～30代から萎縮が始まる一方、神経新生(神経の生まれ変わり)により何歳になっても萎縮を抑え、増大することも可能な部位であることが科学的に分かっている。

■５■海馬はhippocampus(hippo⇔horse馬、campus⇔sea monster海獣)の和名だ。ギリシャ神話の海獣ヒポカンプス(上半身が馬で下半身は魚)より名付けられたとされる。タツノオトシゴの学術名もhippocampus⇔seahorse)だが、海馬領域とそれに続く脳弓?乳頭体を同時摘出するとタツノオトシゴに似ている。

■６■大脳内部の左右にある側脳室の内に海馬はある。海馬からつながる脳弓?乳頭体は大脳下縁をほぼ一周する。海馬や情動中枢の扁桃体を含む大脳辺縁系は､私たちの視･聴･嗅及び触覚や運動神経系とも繋がる。運動系･体性感覚系は頭頂葉中心溝の前後の神経支配を受け、前者は下方、後者は上方へ向かう。

■７■現代医学や科学を鵜呑みにはしないが全否定するつもりもないまま、目を瞑って自分の海馬があるであろう空間的位置をイメージでまさぐってみる。自分の夢の話も他者それぞれの記憶やイメージを喚起する可能性もあるのだから、創造の可能性として文字化して表わすことも全くの無意味とは考えない。

■８■自らの肉体や脳内には意識がないと言う者もいるけれど、天空の星座や諸天体にも意味や世界観が対応するように、単なる物質や器官と見る捉え方を超え、自らの外にある知の体系を身体内部と重ね呼応させながら、自己他者や自我と世界を味わい考えつつ、それをはみ出して行く｢未知筋｣もあるだろう。

■９■海馬は場所や経路の空間記憶に関与しており、また感情を伴う情動記憶にも関与しているという。思考や論理も否定することなく自己を顧みれば、それでも半ば無意識や偶然に心身を信頼して委ねながら、現在と連続している空間や情緒を重ね手繰るように、心地良い河畔や土手沿いを歩いているのかも。

■10■海馬の神経細胞は新生可能なので、何歳になっても機能向上の可能性があるという。海馬を萎縮させるストレスをしっかり管理し、逆に記憶力や認知機能を活性化させる脳トレーニングを遊び、海馬の成長を促し記憶力や認知機能を改善する有酸素運動をして、海馬の機能改善に役立つ睡眠を十分取ろう。

(※)画像<2>左はwikipediaより。同右及び画像<3>は｢さいたま記念病院｣より借用しました。感謝。

■０■週刊少年ジャンプを創刊号から買い続け、勝手に魔導書と呼んでいたりするのだが、今週号22・23合併号の裏表紙広告でシャンプーと『遊戯王』がコラボしていて、キャラクターの海馬瀬人クンが出ていて、勝手に個人的シンクロに喜んでいたりする。『遊戯王』知らない人には全くの無意味だけど(笑)。

20250429 Tuesday