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■１■そもそも自宅のある御器所(ごきそ)もそうだが、名古屋には難読地名が多い。守山区の庄内川左岸には志段味(しだみ)という地区がある。この地名は
ＮがＤへの音声学的｢同化｣現象により、例えば境内(ケイナイ→ケイダイ)のように、シナ(階･科･品)＋ミ(接尾語)がシダミに転じたものと考えられている。

■２■<科･品>の付く地名の多くは台地のような高所か河岸段丘を示すが､この志段味は庄内川のつくった河岸段丘を示す地名だ。先日登った名古屋最高峰の東谷山の麓には古墳が多かったが、娘を天皇に嫁がせて尾張国造として勢力を持つ、名古屋のルーツの古代尾張氏へ繋がる勢力のものだと考えられている。

■３■東谷山はその昔、尾張山とも東國山とも呼ばれていた。この場合の國は尾張を指すが、かつて東京浅草でテラバイトをしていた曹洞宗の寺名も東國寺だったことを思い出す。さて庄内川河口まで33kmの看板を過ぎ、その名の付く、橋桁がパステルグリーンの志段味橋をくぐると綺麗に護岸整備されていた。

■４■増水時の水深を示すポール群のところで、スギナの緑が眩しい堤の斜面を降りて水際に行ってみると、コンクリートで綺麗に護岸整備されていた。歩きやすい新緑の河川敷をご機嫌で下って行くと、またもや突然枯れ枝こんもりトラップゾーンになった。取り敢えず土手に登って堤防上の道を川下に歩く。

■５■河川敷も全部きれいに整備されるより、これはこれでいい気がする。気分は上々でゆったりしているが、それでも草木や流れや全体の風景などを極力見逃すまいと、眼と意識は高速で動き判断している。いい感じのちょっとした変性意識だ。東名高速が通る橋桁がクリームイエローの庄内川橋梁もくぐる。

■６■さらに200ｍ進むと橋桁が緑色の下志段味橋があり、それも抜けると川の流れは対岸の長久手側へと遠のき、その手前は踏み入ることができない竹や笹や木立ちの群生ゾーンが続いている。また小さな支流の合流点がある。今度は無理せず小橋を渡るが、その後は高架線に阻まれて庄内川に抜ける道がない。

■７■川から離れると焦りつつ数百メートル進み、高速の下を抜けるトンネルを発見。くぐってから道に沿って逆戻りすると道は完全に生き止まりになる。スマホで確認すると川の上流に歩いていた。川から離れて方向感覚がなくなったままバス道を進むとまた支流があり、それに沿ってなんとか庄内川に出た。

■８■そこからはずっと支流の合流と樹木の生える中洲が複雑に絡み合う、大好きな水辺風景が続いている。河口まで30.6kmの看板あたりで橋が見える。吉根橋だ。前回前々回と両岸を川下りした開始地点である。あの橋から上流の景色をすごく気に入っていたのだが、よもやその景色の中から橋を望めるとは。

■９■いつも工事しているショベルーが今日は止まっている。今日はお休みなのか。橋まで続く木陰の小径を抜ける風が心地よい。名残惜しいが最高の気分のまま橋を左折して、上島西からゆとりーとラインに乗って帰路に就く。途中で今日は初めて竜泉寺の湯をバスの車内から見た。様々な視座で豊かになる。

■10■また今日は小幡緑地で一般道を走ってきたバスが高架線に乗る時、車体下から導輪を出してガードレールに接続する行程を車内で体験できた。異なる様々な視座から同じものを見て、印象や新情報を記憶の中で重ね合わせて豊かにしていく。過去も繋がり未来と繋がる可能性も視野に入る。楽しい川歩き。

20250428 Monday