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■１■吉根橋を渡り春日井市に入る。先日名古屋側を歩いた時は、最初から堤防が川からどんどん離れて行き、広い河川敷を占める森や竹林ばかりを眺めていたので、対岸にずっと続く堤防の上を歩いてみたかった。しかし春日井市側に来てみれば、川下側に1.5kmも続く護岸工事で堤防には進入禁止の看板が…。

■２■水際を歩きたいのに、堤１つ隔ててこちら側からも見えない川の流れにチョイエロさすら感じるのは、いつの間にか河畔アルキニストになっているからだろうか。工事は不要になった排水桶管を撤去して堤防補強しているようだ。桶管とは支流が逆流しないよう設けられた施設のことだ。勉強になるなあ。

■３■工事が尽きるところから堤防に上ると、河口より29.4kmの表示看板があった。そこからは先日見えなかった対岸側の水際が良く見える。堤防の上部を天端(てんぱ)というのだが、そこを通る舗装道路の路肩を表わす白線を超えて、風に煽られたのか急激な成長からか、葛(くず)の蔓先が何本か伸びていた。

■４■このままでは車に踏まれて千切れると思うと何か不憫で、川側の斜面に蔓先を戻してやった。顔を上げると川下に向って同様の蔓先が並んでいる。単なる気まぐれとか、人為的とか独善とか色々考えたが、自分もまた自然の一部ならなんでもアリと､300ｍ程ひたすら同じ作業を繰り返した。少し腰にきた。

■５■堤防より川側を川表、民家側を川裏と言い、また堤防と堤防の間の川が流れる側を堤外地と言い、堤防で守られている側を堤内地と言う。その川表の水際までの間を高水敷と呼ぶのだが、去年の伸びて枯れた残骸の隙間から、また新緑が伸びてきている。街中でないので整備されておらずそこに道もない。

■６■川が大きく蛇行して川岸の木々がなくなったので、枯草と新緑が混じる高水敷に降りてみた。小道すらない。川岸歩きの同好者がいないのは寂しい気がする。いや待て、去年踏みしだかれた道らしき跡が僅かに見える。まだ低い若草の間の名残道を辿り歩く。これも年跨ぎの初めての２度目と言えようか。

■７■強風に吹かれて渦を巻くように見える水面越しに、対岸側を歩いた時は全く見えなかった水際や石の河原が良く見える。１歩ごとに見えるもの同士の関係が変わる景色が心地よい。足元ではナヨクサフジと思われる紫色の花が群生し始めている。法面に突然何の前触れもなくコンクリートの道が出現した。

■８■この辺りは増水時に弱かったので頑丈に作られているのだろう。水際には根ごとえぐられて横倒しになった木々が、再びその場で根付いたまま新緑を出している。そこに増水時の流木や枯れ葦などが覆い被さり、まるで隠者の庵のようにも見える。虎杖が天に向って伸びる。春の河川敷を歩くのは楽しい。

20250424 Thursday