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■１■今日は名古屋で一番高い東谷山に登る。真っ平らな濃尾平野の中にある名古屋市は、ちょっと凸凹のある饅頭のような形をしている。そして守山区はその饅頭に刺さった棒のように東北に突き出ており、東谷山はその先端にある。実は私はこの歳まで｢登山｣というスタンスで山に登ったことは１度もない。

■２■10年余り前に､何も知らぬままラムーコ氏に誘われて裸足で奈良の山に登った。後で大神神社のご神体だと教えられたその三輪山の標高は467ｍだ。子供の頃登った横須賀の三笠山が342ｍ。10代最後の頃、東京八王子でこれも何も考えずに登った高尾山は599ｍ。今日登る東谷山は海抜198ｍだ。ちょろいのか？

■３■名古屋駅周辺の高層ビルミッドランドスクエアの247ｍ、ＪＲツインタワーの245ｍと226ｍ、ＪＲゲートタワーの220ｍよりも東谷山は低い。かろうじてＪＲタワー名古屋の195ｍよりちょっとだけ高いが、栄にあるランドマーク名古屋栄の211ｍよりは低い。だが名古屋に住んで四半世紀、垂直方向は不得意だ。

■４■地下鉄で大曽根に出てそこからゆとりーとラインに乗った。これは相互１車線ずつだが高架線上を走るレールウエイバスだ。ほぼ庄内川に並走しながら細長い守山区を縦貫し、最後は橋を渡ってＪＲ高蔵寺に至る。敬老パスが利用できるのが有難い。高架線なのに送電線や柱もなく、実に見晴らしが良い。

■５■終点の１つ手前の東谷橋で下車し、かなり広大な農園やフルーツパークの縁を歩いてなんとか登山口を見つけ出した。登山者用アプリのYAMAPを見ると、５段階評価でコースも装備も共にレベル１の超初心者向きの山らしい。美しい枝垂れ桜と鶯の鳴き声を背に山に入る。考えたら１人で登るのは初めてだ。

■６■マンションの５階まで歩いて登るだけでハアハア言っている自分の目の前に、不規則な階段がずっと上まで途絶えず続いている。ペースが分からないまま、上でなく足元を見続けつつ息を切らさないように登る。前方に高齢の男女２人がいる。追い越していいのか？挨拶をして、先にひたすら登って行く。

■７■１度大きく道を間違えて慌てて戻り、さあ頑張るぞと思ったら頂上だった。山頂には尾張戸神社があるが見晴らしが良いわけではなく、３階建ての木造の展望台に上って、木々の合間から街と川を眺めた。そこから別の道を歩いて早々に下山した。帰り道は広くてなだらかだった。行きは大変帰りは楽々。

■８■山のふもとまで降りてくると、東谷橋の下の河原が群生する西洋からし菜で黄色く染まっていた。橋のたもとから転がり落ちるように降り、脳内を黄色に染めながら夢中でその中を歩く。気が付くと葦の枯茎の迷路に迷い込んでいた。河原の石や湿地を避けて彷徨い続け、疲れ切ってどうにか道に戻った。

■９■橋を渡るとそこはもう春日井市だ。鬼門は未知なる不得手な山の中でなく、既知で得意なはずの河原だったというオチを頭と胸で転がしながら、帰路はＪＲ高蔵寺まで歩いて鶴舞経由で御器所に辿り着いた。今日は登山よりゴロ石の河原や湿地トラップの葦や萱の枯れ枝草原脱出に気力体力を削られた日。

20250416 Wednesday