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■１■満開を過ぎて葉桜もチラホラ出ているであろう山崎川に、今年最後の花筏を見ようと足を向けた。たかだか２～３日前までの人だかりも嘘のように減り、代わりに若い子達がジョギングをしている。橋から両岸を見ると、新緑の若芽が際立つ。橋の下を見ると、花びらがゆるゆる下流に向けて動いている。

■２■水量はいつもより少なく、川下から川上に向けて風が吹いているので、水面の花びらは流れに乗り切らずゆっくりたゆたっている。川の真ん中はそれでも流れに乗り下流に動くが、両岸近くはむしろ逆に風に煽られて川上に向っている。花びらの動きに関係なく、水面下を大きな鯉がゆうゆう泳いでいる。

■３■川幅10ｍもない川面で、花弁は複雑に動いている。急流が洗う手前岸は花びらが川下に動くが、わずかに淀む中央手前は上流に向かっている。さらに中央向こう側は流れに転がされるように下流に向い、対岸近くは岸に引かれるように留まりながら風で上流に動く。４つの異なる流れが明確に見て取れる。

■４■透明な水だけではこの複雑な水面の動きは見て取れない。花びらという見えるものがあるからこの川の流れと向かい風が織りなす川面の動きが見て取れるのだ。これもまた１つの｢見えるものを介して見えないものを共に見る｣だった。もはや絨毯のように密な花筏は見られないが、春は色々教えてくれる。

■５■左右田橋で折り返して対岸を歩くと、瑞穂北陸上競技場で高校生の大会が行われていた。なるほど、だから川沿いの道で若い子達が体慣らしなどで走っていたのか。歩いて石川橋に戻る途中、かなえ橋手前にソメイヨシノとは別の桜が数種植えてあるところがある。改めて見直すとその樹々は里桜だった。

■６■もう長いことここに植えてあり、それぞれ花弁の多い八重桜系の花を咲かせる品種であるのは知っていたけれど、これらも先日戸田川緑地で非常にたくさんの種類があると知ったその里桜だった。取り急ぎ名前を控え、写真を撮った。楊貴妃・鬱金(うこん)・御衣黄(ぎょいこう)・関山を改めて見直した。

■７■同じ町の人なのにわざわざ外国のローカルな街角で初めて出会った的な。人間ってこういうことあるよな。いやいや、むしろ同じ桜並木の道で何年も見てきていたのに、うかつにもちゃんと視野に入れて認識していなかったのだ。大島桜系だけでも800種以上あるこの里桜。ごめんなさい､もう忘れません。

■８■我々は多大な視覚情報を得ているけれど、自動的に取捨選択されてそのほとんどが脳まで到達しない｡それが正常生活を安定させてもいるけれど｢見えるものを介して見えないものを共に見る｣に行く前に、まず｢見えているのに見ていないものを見る｣べく、能動的に視座視界を変え行く姿勢が必要なのだな。

20250413 Sunday