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■１■御器所から名古屋に出て、近鉄で庄内川･新川･戸田川を跨ぎ、戸田駅で降りた。今日はここから戸田川を下流に歩くのだ。戸田川は日光川の支流で、中川区富田町千音寺地内から南下し戸田川緑地を経て､日光川に合流する全長9.1kmの２級河川だ。いつの間にか河畔歩きマニアになっていることに気づく。

■２■戸田川は過去の地下水汲み上げによる地盤沈下によって、下流域では自然流下が困難になり、最下流にある戸田川排水機場でポンプによる放流が行われている。地図だと流域途中で突然川幅が広がり、広い緑地公園をまとうように蛇行し、また突然川幅が狭まって最後の閉河口で終るという奇妙な河川だ。

■３■さほど期待していなかったのだが、しばらく歩くと美しい川岸が広がり、落ち着いた木立ちに小径が伸びている。富永橋を過ぎると、川はヘアピンカーブ状に蛇行しており、そこから川を挟んで約2.5kmに渡り、非常によく整備された公園がある。両岸合わせて60ヘクタールの広さの戸田川緑地公園である。

■４■長期的に植林と育林を進めているので、心地よい林や森があちこちにある。２カ月に渡って桜が楽しめるよう、開花時期が異なる河津桜･寒緋桜･ソメイヨシノ･里桜など1000本の桜が植えられている｡ソメイヨシノは今まさに風が吹けば桜吹雪となる散り始めで、紀友則の一句が脳内で繰り返し再生される。

■５■今回は川岸歩行なので森の奥深くには入らなかったが、単に山桜に対する名前だと思っていた里桜には非常に多くの栽培品種があることを知った。大島桜を基に誕生した栽培品種群だけでも200種以上あり、近年では約800種が確認されている。花と言えば桜と心得ていたつもりで何も分かっていなかった。

■６■里桜は八重桜のように花弁が密集したものが多く美しい。最初はその名前をメモしていたが、あまりにも多いので途中であきらめた。都心部の公園ほどの雑踏はないが、それでも多くの人が花を愛でていた。橋桁が緑の新東福橋までで緑地が終わり、そのすぐ先にある東福橋で川幅が急に狭くなっている。

■７■そこからは戸田川も他の河口近くの川同様に直線的なるが、それでも河口近くになるとありがちなコンクリートむき出しの壁や護岸がなく、春の新緑に満ちていた。北茶屋橋を越え、名古屋第２環状自動車道が近くで川を跨ぐ両茶橋まで来ると、その先は両岸が工事中で迂回路も遠いので今日はここまで。

■８■川を離れて東に１km程歩くと巨大なイオンモールの先に南陽交通広場がある。東山線高畑、あおなみ線港北、港北線港区役所、熱田神宮のどこかに行けることは調べてあったので、取り敢えず来たバスに飛び乗った。この行く先ルーレットバスは港区役所行きだと分かったが、知らない道をどんどん走る。

■９■途中のバス停に明徳橋があった。知っている。新川を渡る日の出橋のすぐ隣で庄内川を跨ぐ橋だ。よもやバスで通過するとは思いもよらなかった。そこからはずっと一直線の東海道を東進する。同じ地下鉄なので港区役所まで行かず東海通駅で降りて名港線に乗り、上前津から鶴舞線で御器所へと戻った。

■10■バスは名古屋市全域をカバーしてくれるので実にありがたい。しかし贅沢な言い分だが、長距離になるほど時間がかかる。名古屋市の血管とも言えるバス路線の毛細血管まで含む全体像の把握には今しばらく時間が必要だろう。巡る季節の中で、各地の土地の在りようや歴史を知るごとに名古屋と重なる。

20250410 Thursday