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■１■｢日本語の言語空間｣という表現がある。極端な高文脈文化でもある日本と日本語は、コミュニケーションのコンテクスト(文脈)において、言語以外の非言語的な領域での情報を重要視する。極端に言えば、言語が表立って指示・表現しているもの以外の広大な前提と情報を持つ言語空間の中に我々はいる。

■２■言語空間というけれど、言語を介さない空間や言語の及ばない空間というものも存在するのではないか？というツッコミがあるとすれば、その着想や問い掛けそのものが既に言語空間そのものから逃れられていない思考や状態であるとも言えるだろう。言語が異なれば異なる空間に生きているという現実。

■３■言語の及ばない世界を感じ、確実に存在することを疑うことなく、しかも人間にとっての世界と言語空間との強固な重なりを見詰め、嫌悪したり拒絶したりすることなく、そんな中で日本語という特異性を見詰めながら、動的平衡を取りつつより良い生き方を追求していく生命ベクトルを持てるかどうか。

■４■夢を言語化しても伝わらないように、他者と空間を共にして何かを為す時には何の役にも立たない個人的な憧憬のような感覚ではあるけれど、それでも自らの内では何らかの情緒的に満たされる豊かさはある。物質的なものではなく意識や情緒の何らかの形･色合い･匂いとでも表現すればよいのだろうか。

■５■そして奇妙なことに、それはまた綿棒多面体を無心に作っている時、稀に起こる感覚とよく似ているのだ。それは普通の意味の思考とは別の形の思考のようなところで生起する。それは記憶の中には存在しない何らかの形や匂いとして感じ取られる。そんな時に直観や予兆の片鱗が恩寵のように訪れ来る。

■６■また｢数独｣をやっている時もそんな感覚が生じる時がある。９×９のマス目の各列各行に１から９を全て重ならないように入れ、かつ３×３のブロックと言われる太枠のマスの中に入れるというだけなのに、同じでないパターンが54億7273万0538種あると言われる。非知覚認識かつ非言語での風景的感覚。

■７■死期が近いではないかと思う程世界が美しく見えることが稀にある。しかしそれも素晴らしい妄想であると考えられるのは、日本語の言語空間のおかげだろう。言語自体を言語で捉え語ることは、自らの歯に噛みつこうとする衝動にも似ているが、それをただ完全否定する不自由さに委ねるつもりはない。

■８■日本の歴史や文化・技術、日本人の協和性や気質、日本国の風光明媚な自然等が世界中に知られ、好意的に評価され、興味や憧れを持ちつつ訪日する外国人が多い。見つかってしまったらもうそれは続かない。そのさらに先に進むか爛熟して消滅するか。言語化されるものは常に言語に先行していくのだ。

20250407 Monday