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■１■｢最も少ない生き方をした者が最も豊かな人生を送れるのだ｣というフレーズが今でも時々頭をよぎる。自らの生き方の中で心の支えにも慰めにもなった。レイ・ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』その他の短編を萩尾望都氏がマンガにした作品の中のどこかにあったと記憶しているが、今では定かでない。

■２■我見という糞色眼鏡を手放せないまま世界を眺め見る貧しさ。豊かという語義が名声や金品や権威によるものではない何を指すのか探究しつつ、その最も少ない生き方という独自性を、ただ環境や遺伝による受動的諦念からでなく、諸事に対する自らの能動的選択を介して万事を肯定的に創出しゆくこと。

■１■長時間歩いていると昔のことを思い出すということを思い出した。特に無心で歩いていると、稀に自らの記憶を超えたものを思い出すような感覚に襲われることがある。子供の頃からそれは知っていた。そのままでは何の役にも立たない個人的な場の匂いや空気感。それは多分記憶というより共鳴に近い。

■２■現在は元々脳内や身体のどこかに刻まれていた記憶の想起というより、その場の何かと自らの無意識の在りようが重なりあって立ち上がる、何らかの情緒的エッセンスとして捉えている感じだ。それは忘却していた過去の記憶なのか、あるいは他者の相似形な想いの残滓だろうか、非言語的な変性状態だ。

■１■色々な人と話をしていて感じるのは、思考が得意な人と苦手な人の違いと、思考そのもののカタチにも色々あるということ。さらに言えば思考だけが対話のスキルではないし、朴訥であっても話のリズムや間合い、言葉に乗る情緒や相手への思いやりなどで、相性もあるがずっと話をしていたい人もいる。

■２■まあ双方の感性や人生のバックグラウンドにもよるものだろうが、たとえ話をしていなくてもそこにいて安心な人とちょっと不快な人もいる。背中を向けていても微笑んでいるであろう人と、不快に顔を歪めている人とは、人間同士でまあわかる。そんな時にはそっと微笑む｢口元数ミリの革命｣も有効だ。

■１■人間には時間の感覚がある。過去の記憶と現在の自覚と未来の予測。固定した不変の今というものはなく、今現在の思考や感覚と言っている時も、時はあるいはそれを時として捉えている意識は変化変容し続けている。音高の移動、色調の変化、形状の変容、味の遷移知覚に変化がある時、人の情が湧く。

■２■情を無視し矮小化する知性は、その依って来たる体（身体のみでない）を軽視し過ぎている。生来の不自由さでない不健康な生活を続けつつ、人間のあるべき姿を語る時、人間の喜怒哀楽と思考・知性・論理を立て分けがちだ。知と情は明確に分別できる時もあるし二而不二な時もある。情を楽しむ余裕。

20250402 Wednesday