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■１■日曜の朝、名古屋駅のバスターミナル。今日は先日ここでバスを乗り違えてあっさり断念した新川の河畔歩き再挑戦なのだ。今回は色々しっかり調べてきた。乗場は１番で９時15分発の名駅25番系の名古屋行き左回り。え？ああ循環路線なのか。あっさり出発だ。運転手さんの丁寧なアナウンスが優しい。

■２■運転技術も含め、発車停車時には必ず反動にご注意くださいと言う。外国人ではないけれど、その在りように感動すらしてしまう。バスの中から窓外を眺めているだけで、今まで歩いて繋いでいた街角と街角がスルスルと繋がり行く様子を見る時の驚きと喜びは、歩いてみた者にしか分からないだろうな。

■３■3豊公橋で下車して庄内川に架かるこの橋を渡ると隣に新川がある。今日は風がかなり強くてＴシャツにジャージ１枚では激寒だ。橋桁の下で長袖シャツを着てから、川下に向けて歩き出す。本当のスタート地点はここだ。新川は氾濫が絶えなかった庄内川に平行して作られた人工川なのでずっと真直ぐだ。

■４■川を渡る電線の上にカラスたちが川下を向いて止まっていた。横を通ると、川に沿った電線１本の上に１匹ずつ順番に止まって追ってきた。声を出して挨拶したらいなくなった。何だったのだろう。欄干がピンク色の大治橋があり、ここはもう海部郡大治町なのだと分かる。両岸道路に民家が迫っている。

■５■川を斜めに渡る新大治橋で、真直ぐな新川は南西からほぼ南へと向きを変える。今日の新川は上流に降った雨で増水して濁っている。川面は強風で波頭が上流に向かうのに、川岸近くは大量のゴミが川下に向ってぐんぐん流れていく。河口まで10kmの看板を過ぎると、橋の主桁が黄緑の２階の橋が見える。

■６■名古屋高速５号万場線と県道115号は上下２層のまま万場小橋で新川を渡り、万場大橋ですぐ隣を並流する庄内川を渡る。そしてこの直前までで大治町は終り、流域は名古屋市中川区に入る。両岸には菜の花によく似た黄色いセイヨウカラシナが咲き始めている。生命力旺盛なこの植物は食用可能だという。

■７■さらに先に進むと単線の踏切が見えてきた。私鉄かと思っていたがよもやのＪＲ関西本線だった。列車が通過する。２両しかない。と思っていたら次の車両は１両だった。もはや列車ではない。そういえば以前奈良からの帰宅で１度乗ったことがあるのを思い出した。本線なのにローカル線の味があった。

■８■伏屋橋を超えて進むと再び踏切があり、ちょうど列車が通過する。このあずき色は知っている。近鉄だ。この先３km程で新川は庄内川とまたぐんと接近するのだが、今日は無理せずその先の榎光橋を渡って左折し、伏屋駅で近鉄に乗って名古屋駅に戻ることにした。ゆっくり歩いての今日は１万３千歩か。

■９■川を渡る近鉄名古屋線を始めて岸から見て、しばらく後に今度は川を渡るその近鉄車両の中から川と川岸を見る。これまでの初めてと初めての２度目の違いの視座と視野の差異と相似を更に超えて、同じ見るものと見られるものの関係を、その視線の反転によりその全体の体験から１つに統合する豊かさ。

20250331 Monday