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■１■今日は日本語の｢言語空間｣全体ではなく、空間を表す｢空間言語｣について見て行きたい。人間の三半規管に象徴される１次元・２次元・３次元という空間認識も、二分法的思考の元に対表現されており、<長い-短い><太い-細い><大きい-小さい><広い-狭い>などの空間的な状態を表す形容詞は無数にある。

■２■その両端がある対表現での程度の全体を表す名詞を捉え見てみれば、長短を表す場合は<長さ>、大小なら<大きさ>、太細なら<太さ>、広狭ならば<広さ>と通常は表現する。特別な視座や一方を強調する時は<小ささ><短さ>などとも言うが、極小と極大方向で見ればそれは主にマクロ方向で表わされている。

■３■この在りようは日本語に限らず非常に多くの言語にも共通しているということを、湘南女子短期大学の斎藤正彦氏は多くの例を挙げて見せてくれている(上表)。これは私たち人間の空間認識そのものに通底するものであり、自らの視座に対して無限小に収束する方向か、無限大に発散する方向かでもある。

■４■この基準を介して自らの世界の外側と内側のどちらを主に捉え見ているかも１つの考察基準になり得るだろう。またほかにも物性的形容詞である<重い-軽い>の<重さ>、<明るい-暗い>の<明るさ>、<硬い-柔かい>の<硬さ>、<高い-低い>の<高さ>、<美しさ-醜さ>の<美しさ>など、例を挙げるには事欠かない。

■５■もちろん形容詞全てがこの在りようを示しているわけではない。様々な言語的な比喩や技巧も入って来るし、日本語では真逆のルビを乗せられたり、表現されていない高文脈の方に本質があったりする。無言にも意味を乗せ得る高文脈文化の言語は、低文脈文化の言語的在りようも扱えるがその逆はない。

■６■論点がぼける前にまとめておくと、低文脈文化にある論理や思考で空間や意識の新しい世界観を語る時、その語る言語が高文脈文化にある日本語を用いているという明確な自覚がないと、語る者の負荷が大きい前者と聞く者の負荷が大きい後者の両方の負荷を帯びた表現法になりがちであるということだ。

■７■自らの構築した言語空間を反転して他者側に表出する時、分かり易く丁寧に伝わり易さを心掛けて表現されたものと、自らの想いや世界観が客観の堤を乗り越えて溢れ出てしまうもの言いとの差は、根底にある優しさの質だとも言える。言語センスと言ってしまえば終りだが、論理弁者の詩は最悪が多い。

■８■新しい世界観を言葉で語る場合、まず最初にその言葉そのものへの繊細な認識や理解があるべきだろう。見えないものを見ると表現する場合でも、最初の人間的な知覚認識としての｢見る｣がまずあることを無視して高次元を語っても、それ自体が自他間の情報共有を損ねていることに気づくべきであろう。

20250330 Sunday