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■１■黄砂交じりの曇天の空の下、春の温かさに尻を押されつつ地下鉄で名古屋駅に出た。ここから今日初めて敬老パスを使って市営バスに乗り、未だ未踏の中川区の西端まで行こうという算段だった。名古屋駅のバスターミナルは非常に多くの便が出でいるので、時刻表や乗り場は現地で情報収集することに。

■２■全体の乗り場案内板で豊公橋行きを探す。１番乗り場だ。ぐるりと大回りして乗り場に辿り着いたが、豊公橋行きのバスは１時間に１本で、かなり時間が空いていた。しかしほかの路線でも幾つか豊公橋を通る路線があることを知っていたので、隣の２番乗り場で発車しかけているバスに飛び乗ってみた。

■３■敬老パスもちゃんと使えた。バスは発車したが、その時初めてこのバスが名古屋大学行きだと知る。数秒間脳は止まったが、まあ今日は乗車体験だけでも良しとしようと切り替える。もう少し動揺を楽しんでも良かったけれど、さてどこで降りるかだ。おお吹上を通るのか。でももう少し踏み外したいな。

■４■１部咲きにも満たないけれど、窓の外に見える桜はもう咲いている。かつて歩いていた道筋をバスの中から見るのは新鮮だ。物理的な視座の変換だけでもこれだけ違うのだから、日頃から同じものを異なる視座でも見るということがとても重要なのがよく分かる。車内もまた色々な客がいて目まぐるしい。

■５■吹上で交差点の写真を撮っていたら、バスは急に左折した。ここから今池方面に進むのかと思っていたら、今度はまたすぐに右折した。なるほど、ラクダ書店の前を通って春岡通り方面に進むのか。Benryの看板が見える交差点。あの通りからここに出るのか。歩き回っていた道とあこちで交差して楽しい。

■６■途中のどのバス停で降りようかと身構えてはパスしているうちに、終点の名古屋大学に到着してしまった。ではここから少し歩いて帰るかと思っていたら、人々が傘を差し始めている。雨かよ。大きな大学構内の案内図を見る。いや広すぎるだろう。色々あり過ぎてどこに行ったらいいのか分からないぞ。

■７■仕方ないので次回は少しは下調べしてから来ることにしよう。取り敢えず一回りしてから地下鉄名城線に乗り、八事で鶴舞線に乗り代えた。しかし御器所の１つ前の川名で、公園の花々がどんな具合か見てみようと思い立って急遽下車した。白い雪の下や黄色の菜の花やピンクの早咲桜がもう咲いていた。

■８■月末は１度少し寒くなるらしいが、世は既に春に突入している。桜が咲き乱れるこの時期は、多くの日本人は皆軽度の幸せな春狂いになるらしく、私もここまで位なら狂喜乱舞しても大丈夫かなと姑息な計算をしながらも、浮かれて歩いて楽しむことにしようと思う。捲れ上がる季節の端境期ここにあり。

20250328 Friday