46042

■１■何度も言うように名古屋には高い山がほとんどないので、その代りに河畔をよく歩く。そしてたびたび思う。山道を歩くことと川辺を歩くことは似ているなと。垂直と水平、凹凸と平坦でむしろ逆の関係ではないかと捉えるかもしれないが、２つの間に差異を見る目があれば、その分相似も念頭に浮かぶ。

■２■山昇りの目的の１つが登頂であるように、川辺歩きの目的の１つは河口に至ることだ。山岳踏破と川岸歩行との間には、身体的負荷の差や前準備の大変さは比較できないくらいあるけれど、前者が途中で幾つものピークを越えて行くことは、後者が幾つもの合流点を超えて河口に向かうことに対比できる。

■３■山頂の先は空に続き、河口の先は海に続く。川下でなく川上に向い、水源まで辿ることも１つの道筋かも知れない。しかし無数にある登山道を歩き下り、どこが山と平地の堺なのかを見極めることが難しいように、大河の支流や水源も沢山ある。山や川には名前はあるが、それらには名もないものも多い。

■４■庄内川は名古屋市の北東から北縁を通り、西縁を巡って伊勢湾に注ぎこむ。その河岸を河口までぐるりと歩いた。市内を流れる堀川､新堀川､山崎川、そして天白川もその川岸を名古屋港まであるいた。そこでもう市内の大きな河畔は歩き尽くしたと思っていた。だが一本西を新川が流れている事に気づく。

■５■新川は名古屋市の西区上小田井から中村区の豊公橋までほぼ直線で流れるが、途中から流れは清須市を通り、その後は隣の大治町を通って海へと流れ下って行く。しかし最近、その新川は名古屋高速５号を通過すると、再び名古屋市の中川区と港区を流れていることを知った。未踏の地がまだあったのだ。

■６■減税で有名な名古屋市は、65歳以上の住民は市営の交通機関を無料で利用できる｢敬老パス｣も施行している。基本料金を払えば、市営地下鉄や市営バスなどの交通機関を､年間730回まで無料で利用できるという優れもので、最近ではＪＲや名鉄等の市内走行分も、２か月後通帳に振り込まれて戻ってくる。

■７■貧乏爺ぃにはこれは実に有り難い。それは既得権益者側からの感想であり､その年間約150億円ほどの必要経費もまた若者から搾り取る悪政ではないかと、昨今の増税論者的な意見もある。だが医療費や養護施設にのみ特化せず、高齢者が動くことで健康を保つという発想は、減税効果と同様顕現している。

■８■庄内川の川向こうの中川区まではＪＲ関西線と近鉄名古屋線が通っているが、他にも市営バスが走っている。これまでの敬老パス使用はほとんど地下鉄とあおなみ線のみだったが、さらに未知の河川敷を歩くために能動的にその使用範囲を広げてみることにしたい。己れの健康が一番市のためになる事実。

20250327 Thursday