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■１■上品な描出とは言い難いが、日本語には｢上の毛｣と｢下の毛｣という表現がある。かつては上の毛を丸坊主にすることを剃髪と言って昔は｢出家｣に通じるものだった。また自主禁欲やある目的を達成するまでの願掛けを目的に、下の毛を秘密裏に丸々剃ってしまうことを｢裏出家｣などと称していた者もいた。

■２■なお下の毛の方は日本では古来より呪術的に力のあるものとして扱われていたことが民俗学的に研究されている。ちょうど今から半世紀前に『土佐の一本釣り』(青柳裕介)という漫画があり、出港時に主人公が恋人の下の毛をお守りとしてもらうシーンがあった。船が無事帰港すると信じられていたのだ。

■３■昭和でなく令和の時代の現今、日本のパーマネント技術・結髪・カット・染髪その他の美容技術は、革新性と精巧さで世界中で高く評価されている。上の毛を含む頭部はそれらにより、最新流行のヘアースタイルに加えてウィッグや様々な付属品と共に、普段から目に見える形で美化装飾がなされている。

■４■一方普段は目に見えない下の毛の方は、現今では著しく手が加えられているケースが少なくない。アンダーヘアという直訳表現があるが、これは和製英語で海外では通じない｡また｢VIO｣という表現がある。バイオでなくブイアイオーと読み、前方恥骨周辺･性器両側･肛門周辺の毛形そのものから来ている。

■５■知っている人は今更だろうが、日本人の下の毛の処理や脱毛への関心拡大はバブル景気の時期と重なっている。下の毛を無駄毛と表現して衛生的にも適度に処理した方がよいと主張し、ムダ毛処理用と称した器具や薬品を売る会社や、細かいケア方法を語る医師も増えてきた。金儲け臭もないことはない。

■６■欧米のサッカー選手などは普通に下の毛の処理・管理はしている。イスラム教徒は最低でも15日以内に腋毛と共に処理するのが宗教的常識だという。古代エジプトのパピルスにも除毛の方法が書かれているそうだ。日本では古来より女性の下の毛は猥褻ではなく、南方熊楠もそのパワーについて研究した。

■７■江戸から明治時代になると、近代化の中で混浴や春画や性に関する事柄が、野蛮なものだとして否定され禁止されてゆく。西洋の(特にキリスト教的)価値観が広まる中で、下の毛信仰は圧殺されていく。常識や共有感覚は時代と共に揺れ動き定まらない｡そして現在。別のベクトルのまま反対に振り切れる。

■８■清潔さでは世界に冠たる日本だが、不潔なままも宜しくない。不安不快を煽る古い手法で、身体部分に関心を向けさせられている。他者に踊らされず、良い機会として自分なりに再考するのも良いだろう。と言いつつ個人的には白黒つけようとしても白くなる一方だし、上の毛は自然脱毛で減る一方だが。

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(※) 画像出典画像<１> Ｃ青柳裕介／小学館、画像<２> ｢Oggi.jp｣　、画像<３> wikipedia

20250219 Wednesday