46007

■１■｢電車の中で弁当を食って良いのか悪いのか論争｣というのがある。地方の観光列車や、空席の多いボックスシートでの弁当食いは、臭い漏れに注意し他客の了解があればＯＫだくらいには思う。しかし大阪ではベンチシートで弁当を食うのがＯＫだという。大阪は堺在住の人の言明だが裏は取れていない。

■２■｢赤信号みんなで渡れば怖くない｣(1980年代のツービートのフレーズ)が説得力のある大阪だから、普通の常識は通じないのかも知れない。しかしその情報元である堺在住人の弁だと、カップラーメンを車内で食うのは汁が撥ねるのでもっての他だとか。え～っ、大阪の常識にはさらに半捩じりがあるのか。

■３■しかし大阪の常識は全国の非常識という偏見で話は終わらない。常識だと思っていることがより大きな視野からは、実は非常識またはローカルルールだということはある。日本の常識が世界では非常識と言う案件もないことはない。<大阪と日本>という枠を<日本と世界>にスライドして見るとどうだろう？

■４■結論から言うと、何と(汁物は別として)大阪の方が世界基準だった。韓国や中国の車内の床は食った弁当その他のごみで一杯という動画を思い出した。調べてみると中国や韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、マレーシ等では、車内での飲食が基本的に全面禁止されている。ただし順守されていない。

■５■イギリスはロンドンの地下鉄では飲食ともに可能だ。オーストラリアの電車内では、移動中の食事は問題ない。ドイツではよくある光景であり、イタリアでも全然ＯＫだ。スペインはカフェテリア車両で軽食や飲み物を購入し飲食可能。もちろん高級車両では朝昼食事付きのほかドリンクサービスもある。

■６■ただしスイスの公共交通機関の車内での飲食はご法度で、バーゼル・シュタット州とバーゼル・ラント州では20フラン(約1700円)の罰金となる。その他も現地のマナーやルールがあり、日本全国のマナーやルールが全ての常識と思い込みがちだが、大阪…あるいは堺基準が世界基準とも言える地域もある。

■７■再び日本に戻ると、ＪＲの公式見解では車内の飲食は可能だ。他の鉄道会社も飲食禁止はしていない。日本では携帯電話のマナーはあるが、飲食に関してはない。日本では暗黙の了解として他者への配慮が大前提であり、禁則事項として文章化するのではなく、個人と相互間の判断に任せられているのだ。

■８■過去の事例に強く準拠しがちな法律に縛られるのではなく、常にその場その場での当事者同士で｢今ここで解決すべき問題｣として実にフレキシブルに任せられているのだ。さらに日本独自の自販機や弁当等の販売店や製造会社等のサービス業界への配慮もある。実に好ましい日本的な非常識な問題なのだ。

20250201 Saturday