45090

■１■９時20分に家を出る。地下鉄の優先席に赤ん坊の乗ったベビーカーを前にした若いお父さんがいて、隣の席が２つ空いている。彼が後ろから来たお婆さんに気を使うとお婆さんは笑顔で大丈夫というジェスチャーをする。何かこちらも座り難くなって数駅立っていた。こちらも全然問題はない偽老人だし。

■２■新しい通路を通っていて、名古屋駅の地下は本当にダンジョンだなと思う。全体像をほぼ３次元的に把握していると思っていても、新しい施設や通路ができる度に新しいルートができたり閉鎖されたりしている。大阪梅田や渋谷とかは地下街の迷路だけど、名古屋駅は通路だけのダンジョンなんだよなあ。

■３■高島屋の前に開店を待って沢山の人が並んでいる。お土産屋もコンコースも昨日よりずっと混んでいる。山陽新幹線で沿線火事があった影響でかなりの遅延があるらしく、太閤口は大混雑だ。これだけの中をキャリーバック転がして誰もぶつからずにあらゆる方向にすれ違うのは、日本人だけではないか。

■４■個と全体の瞬時把握と回避能力は、日本人の無意識にまで染み入っている特性だろう。渋谷スクランブル以上の難易度なのに。外人もかなり多いのだが、好き勝手に動いたら身動きが取れなくなると実感して自然に馴染んでいるような気がする。それにしてもよく誰もキレて騒がないものだ。日本の民度。

■５■歩く、歩く、人は歩く。杖を突いたり寄り掛かり合ったり、辺りを見回したり、荷物を抱えたりしながらも歩き続ける。ゲートタワーのエレベーターで13階まで昇る。並ぶ、並ぶ、人は並ぶ。ランチ前なのにもう色々な店の人に用意された椅子に座り、話し合ったりスマホを見たりしながらも並び続ける。

■６■さらに13階から51階パノラマサロン行き直通のエレベーターに乗ってみた。心地よい快速で着いたのだが、どこかに入店しなければ全く外が見えなかった。世知辛い。せめてトイレの小窓から眼下の景色を一目と思ったが、トイレに窓はなかった。幾らでも滞在できた、有料展望台が懐かしい。遥か昔か。

■７■寒風の中の河畔をひたすら歩くのもいいけれど、こうして地下街や建物の中の暖房と寒風吹きすさぶ外を互い違いに歩き回る街中ウォークもいいなと思った。ちょっと走りはできないけれど。結局ジュンク堂で立体幾何と太陽系と温泉の本を読み耽っていた自分に気づく。面白いけど買うまででない本群。

■８■ある年齢になると、本や漫画を裸眼で読む距離が目のいい人と近視の人の視野反転の１つの界面だと気づく。近眼の人はそこより遠いと眼鏡が必要となり、遠視気味の人はそこより近いと老眼を掛けなくては見えない。スマホ画面距離の空間の内と外の得意不得意。互いに敬意をもちつつ両域で生きたい。

■９■そんなことを考えながら帰宅した地下鉄の中。地下鉄があることへの感謝。敬老パスのあることへの感謝。街並みも通りすがりの人も様々な状況もここにあることへの感謝。そして今ここにないがゆえに余地空白を生んでくれている｢今ここに無いものたちの無いということへの感謝｣も抱えて御器所到着。

20241228 Saturday