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■１■朝起きる。いつものように窓辺に朝日が差し込んでこない曇天。５℃、体感３℃。今日も筋肉による走歩行運動ではなく、より総体的な｢体｣に対する今まで見えなかった垂直方向(重力方向だけでない)を模索しつつ、名古屋の街を歩く。最初から明晰無比な知見ではなく、妄想像と邪我見を楽しみながら。

■２■名古屋駅から２つ目の東山線伏見という駅の文字盤。そこには他の駅にはない｢与利子｣と読めるマークがついている。その名は大学の後輩興梠敬二氏の嫁さんの名前なので以前から気になっていた。今日確かめたら名古屋初の駅中地下鉄駅中商業施設の名前でヨリマチだった。ああ確かに子でなくマチだ！

■３■堀川沿いや駅前近くの様々な裏路地を歩いた。突然訪れては消える幼児期の言語以前の情緒記憶。生鮮市場近くにある老舗の海苔屋さん。基本的には「のり子さん」なんだけれど、自販機と店頭に様々にキャラクター化された丸いパック詰めの味付け海苔やふりかけが並んでいた。ちょっと買ってみたい。

■４■街並みには本当に様々な創造意匠の顕現がある。立ち並ぶ建築物や整備された森や並木、交通機関や流れる河川。張り紙の中の思いやりや案内板の正確さ。それらは皆当たり前すぎて感謝の念はなかなか浮かばないけれど、元々そこに在るのではなく、長年に渡って人間が作り上げ積み上げてきたものだ。

■５■創造と破壊、平和と戦争、共有と強奪、独善と協和…。二択ではなく二而不二の中で気づき上げてきたものたち。長きに渡る日本人としての特質が形として現われたものだ。物質として今在る目に見えるものに重なって、目に見えない過去の力積と未来への構想もそこに在る。そこに今視座と身体がある。

■６■自らの｢体｣もまた様々な特質や幸運、選択や偶然により現今の形になっているとも捉えられる。目に見える肉体や所有物だけでなく、目に見えない種と群と個の重層する、誰とも共通点を持ちながら誰とも異なる存在形態。今この瞬間瞬間だけでなく一生の連続体である｢体｣。そこに今視座と自我がある。

■７■そんな目で年末の街中を歩き見ている。イコールではないが自我と身体が不二であるように、視座と街並もまた重畳している。見えるものや想像できる様々なものはこの身体界面(皮膚)の外側でも内側でも界面(ベシカパイシス)でもなく、そこを反転させた外でも内でもないところで他者不二と美を見る。

■８■いろいろ歩き回って、最後にJRセントラルタワーズ８階で長いこと立ち読みをしていた自分に気づく。歩くより立ち続ける方が疲れることはあるけれど、面白い本はつい読み入ってしまう。こんな本も出るんだと思うような、理数系学者たちの科学的エッセイ群。良く読み、良く食べ、良く歩き生きよう。

20241226 Thursday