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■１■毎朝寒い。朝日が昇りその陽光の温かさを肌で感じる度に感謝を感じる。６℃、体感３℃。ひるむことはない。９時26分御器所発、鶴舞線で塩釜口
を降りて、９時15分植田西人道橋から河川敷歩行スタート。川の中の岩の上に陽光で暖まろうと亀たちが乗っている。南植田橋は全面車両通行止めだった。

■２■その先は川幅も広がり、堤防の上も手すり付きの遊歩道になった。１km程で緑色の道明橋がある。そこが植田川と天白川との合流地点だった。天白川にはやはり緑でアーチ付きの寄鷲橋が架かっている。川下から見ると合流点の左右に立つ男女の双子の橋のようだ。そして川の円弧状の段差も見事だった。

■３■約19000年前～約6000年前にかけて起こった縄文海進により､尾張丘陵に海水が侵入、年魚市潟(あゆちがた)と呼ばれる入江が誕生し、この植田川・天白川合流点付近に広がっていたという。ただの川の合流点のはずが、縄文の大激変にまで思いは広がり、それに重なって眼前の日常と自然と自分とがいる。

■４■合流点より先は両岸とも整備のための工事中が多くて、堤防を歩けない区間が多かった。天白川緑地橋は橋の全面塗り変え工事中で、橋全体を覆われた真ん中を抜け渡るという面白い体験をした。野中人道橋からの景色が素晴らしい。座って食べるおにぎりが欲しい。しかし綿棒多面体も忘れてしまった。

■５■御器所から鶴舞線で川名･杁中･八事までは昭和区だが、次の塩釜口からは天白区になる。その天白区は1975年(昭和50年)に昭和区から分区した名古屋で一番新しい16番目の区だ。区の名前はその地を流れる天白川から取られた。天白川の名前は、下流の緑区鳴海町に天白社が祀られていたことに由来する。

■６■個人的に天白区と最初に聞いた時から<Ten Pack>、つまり割れた腹筋が<Six pack>という音と同じで英語にしか聞こえなくなっている。そしてテンパックという名前がついたシステム天井材が存在したらしい。乾燥して温度が低いからか、対岸の老人と孫との会話が良く聞こえる。早足を止めると冷える。

■７■川の蛇行や中洲の形状などがまた情緒だけの記憶をかき回す。「存在しない記憶」というフレーズが『呪術廻戦』の中にあったけれど、自分はつくづく知でなく情の人間なのだと思う。刈られてからまた伸びてきた葛の新芽の黄緑色が、堤に咲く花のように見える。ここだけ温かいインディアンサマーだ。

■８■毎日色々なところを歩いていると、多分に多様な景色や雰囲気が共鳴して記憶が呼び覚まされるのだろうが、本当に様々なことが思い出される。その想起した記憶やイメージも、実際にあったのかこれから先に体験するのかすら分からない、言葉や時空間に固定されたものではない情緒体のようなものだ。

■９■平子橋のたもとでラグビー教室をやっている。ここからはもう残り少ない河畔の歩きをゆっくり味わう。野並橋でかつて富重まで歩いた道筋と繋がった。こうやって記憶と記憶が現地で繋がるのか。右折して南区鯛取通りを鶴里駅に向かう。鯛を取ってた場所なのが今なら分る。今日は着替え不要だった。

20241214 Saturday