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■１■こたつの中の老猫に｢行って来るよ｣と声を掛け、５時30分に家を出る。外はまだ真っ暗だ。鶴舞線５時36分に乗り上前津へ。ここで下車して熱田の七里の渡しまで歩くつもりだったが、急に思い立って名城線に乗り換え、熱田神宮伝馬町まで行ってから新堀川をここまで遡上することにした。５時58分着。

■２■地下鉄出口への階段途中で、降りて来た女性がマフラーを落とした。そのまま改札に行こうとしたので｢もしもし｣と声を掛ける。｢あ、すいません｣と笑顔のリアクション。昔ならまずどうするか考えている内にそのままになっていたかも。個人的に土地や街に馴染むとはこういう事なのだろうと自得する。

■３■６時10分、七里の渡しから北上スタート。昔は常夜灯がともっていたらしいが、今はなく世界はまだ暗い。最初の内田橋と新内田橋が重なって川を渡る交差点が工事中で渡れずぐるりと回る。次の浮嶋橋、熱田橋、新熱田橋界隈で川幅は狭くなり蛇行しているし、工事中で渡れない道だらけで迷子になる。

■４■熱田神宮駅でＪＲ東海道線、名鉄本線、名鉄常滑線が分かれているので、蛇行する川と相まって、あちこちで電車が走っているように思える。これは迷うわ。結局ぐるぐる迷って伝馬町交差点に戻り出てしまう。この熱田神宮南側の魔領域を抜け出ると、川岸は真っ直ぐになり、かなり分かりやすくなる。

■５■いつの間にか明るくなってきている。この時間帯はいつもずっと何かを思い出しかけている。刻一刻でなく一生を通じて在る記憶や夢のようなものだ。新開橋で朝空を映す川面を撮っているともう７時だ。止まることなく移ろう空と水面が美しいと感じるのは、人間の知覚がそのように出来ているからだ。

■６■交通事故があったのか、神宮東橋のたもとに花が供えてある。信号待ちで止まると汗が冷えて寒いので牛巻橋で左岸に渡る。新発田橋から見る並木の紅葉が美しい。熱田新橋で、高校生の時自分は見るために生まれて来たのだと強く自覚したことを思い出した。視力は落ちたが、それは今でも変わらない。

■７■立石橋。毎回横断歩道の信号のために遠回りさせられる理不尽。木の匂いがして見上げると、材木の並べ方が美しく空に映えていた。法螺貝橋、東雲橋。それぞれの名前でその地の印象がタグ付けされる。向田橋でＪＲを抜け、大井橋で名古屋高速環状線を越えた時、見慣れた山王通に辿り着いたと知る。

■８■富士見橋通過。富士見温泉に来る時いつも寄るコメダ珈琲店は既にモーニングタイムだ。なるほど、はみ出して行って戻る時、こうやって既知と未知が繋がるのだな。上前津に帰還。御器所駅で名古屋国際の女子高生の流れに飲み込まれ、場違いな爺ぃが混じって御免ねとかちょい卑屈になる自分を笑う。

///////////// 別になくてもいいオマケ情報 //////////////

■９■名古屋市には堀川のほかにもう１つ新堀川というものがある。中区にある堀留水処理センターを起点として市内を南流し、昨日見たように熱田区の七里の渡し船着き場跡地で堀川と合流して名古屋港に流出する。流路延長5.95kmで、新堀川の流れは中区、昭和区、熱田区、瑞穂区、南区の境になっている。

■10■新堀川の両岸の道路は起点からから熱田神宮傍の新開橋まで右岸が南行き、左岸が北行きという一方通行になっている。今池辺りを源流とする曲がりくねった精進川の洪水の発生を防ぐために、1910年(明治43年)に現在の川筋に付け替えられた。流入河川が無いために、ヘドロの堆積や異臭の問題がある。

20241129 Friday