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■１■腰に違和感を覚えたまま目覚める。この季節にたまにある、あのギックリ腰直前の感覚。歩く分には問題ない。無理せずちゃんと意識を向けておこう。５時40分に家を出て、地下鉄鶴舞線に乗る。上前津から大須観音までの間にレールが大きく軋む区間がある。西から北へ90度路線が曲がる場所だと知る。

■２■大須観音で下車して西に進むと堀川に行き当たる。名古屋港に続く中川運河と山崎川の水際は制覇したので、次は堀川を攻めるのだ。名古屋の川は南に向かう。つまり海に向かって流れ下る。中川運河と堀川を繋ぐ松重閘門が明るくなっていく。名古屋城からここまでは既に歩いたので下流に向かい進む。

■３■10℃、体感温度８℃。６時22分、ここから川岸を熱田神宮まで歩くのだが、まだ日の出前だ。先ずは山王橋を抜け、名古屋高速４号線と平行して南下。次の古渡橋からはレンガの遊歩道が整備されている。ＪＲ中央西線･東海道本線･名鉄名古屋本線の３本をまとめてくぐると尾頭橋､そして住吉橋と続く。

■４■住吉橋を過ぎると川幅がぐんと広くなる。さらに瓶屋橋から旗屋橋と進んでいく間に東雲が茜色に輝いてくる。右岸に渡ると、水面に朝焼けが映る。毎朝の茜雲はいつも違っていつも美しい。ここからは右岸には名古屋国際会議室などがある白鳥公園が続く。紅葉と茜雲の絶妙なコラボを眺めながら進む。

■５■対岸の熱田神宮公園に繋がる熱田記念橋をくぐってさらに進むと、川を跨ぐ御陵橋という名のアーチ型の歩道橋があり、そこには東海地方最大級の日本庭園である白鳥庭園がある。対岸には日本武尊が白鳥となって熱田の地に舞い降りたという伝説のある白鳥古墳があり、名前もそこから来ているらしい。

■６■先に進むと国道１号線が川を跨ぐ白鳥橋がある。右岸には整備された堀川千年プロムナードが続き、対岸には大瀬子公園が広がる。東海道として架かる大瀬子橋辺りは川幅がさらに広がっている。橋を渡った左岸には七里の渡し船着き場跡がある。ここは新堀川と合流して名古屋港に至る水上の３差路だ。

■７■七里の渡しは宮宿と三重県の桑名宿を結ぶ東海道唯一の海路で、その距離が七里(27.5km)あったことからそう名付けられた。今では周囲も埋め立てられて海岸線を知るべくもないが、熱田神宮のあった場所は、縄文・弥生時代には岬で、名古屋市の熱田神宮以南は海だった。その地に立ってカモメを見る。

■８■重奏的な歴史の地に己を晒したので今日はもう帰路に就くのだが、やはり絶品のひつまぶしを提供してくれる｢あつた蓬莱軒本店｣の所在を再確認しようと熱田神宮方面に北上した。脳内地図とリアル地図と現地の不整合でかなり迷ったけれど、迷ったおかげでかえって位置がよく分かった。道迷う面白さ。

■９■熱田神宮伝馬町駅から地下鉄名城線に乗って帰路に就く。右回りで上前津経由鶴舞線ルート(８駅)が念頭にあったのだが、環状線なので左回りで新瑞橋経由桜通線ルート(７駅)で御器所に帰るのもありだと実行する。８時07分乗車、８時26分御器所到着。結論、どちらを通ってもラッシュウワーは大変だ。

////// 鈍足な爺ぃの蛇足 //////

■10■若者には旅をさせろ。老人には全て途中の人生旅を整理させろ。誰もが最も正確な原寸大の地図を体に持つが、自分の思い込みこそが現実と捉え、観念の地図と身体の現地を重ねられない。目の前に展開する仮想現実を生きる。常識と理想と言う呪術的地図に生き、現地を行く体の語りを失念して久しい。

20241128 Thursday