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■１■５時半に目覚めて６時に家を出る。６時18分の鶴舞線に乗り、金山と上前津で乗り換えて６時41分に東海通で下車。今日は昨日の続きで中川運河を名古屋港まで歩くのだ。外に出ると既に東向きのビルの壁が朝日でオレンジ色に燃えている。何か食べながら駅に向かう女子高生。走って信号渡るおじさん。

■２■６時48分東海橋に到着。ここから左折して改めてスタートだ。ここから少し運河幅が広くなっている。500ｍ余り歩くと、中川運河が荒子川運河と港北運河に繋がり十文字になっている場所があり、金川橋を渡ると黄色いいろは橋があり、その先にはパナマ運河と同じ水位調整をする中川口通船門がある。

■３■中川運河で最も海側にある中川橋は赤色で見栄えがする。シートレインランドの観覧車はすぐそこだし、橋脚はもう磯辺だ。これを渡り切らないで戻り、道なりに南進する。ここの並木道はもう冬用の剪定作業も終わっている。シートレインランドも名古屋港水族館も月曜なので定休日｡本当に誰もいない｡

■４■地下鉄名港線の終着駅がある埠頭界隈には近代的な建築物が沢山あり、しかもその施設周りの通路や広場や公園は無料公開されている。シートレインランドも入場無料だった。水族館の裏にあるポータン広場の緑と眼前に広がる名古屋港の景色が広大で最高だ。風もなく陽光は暖かい。名港大橋も見える。

■５■時たま散歩の人を見かけるけれど、基本的には無人の空間を独占している。早足で歩く必要もない。天気もほぼ快晴だ。時が止まったようなこの空間には、いくらでもいられるだろう。じっとしているのが惜しい。艦橋のような形の白い名古屋港ポートビルの方の埠頭に、｢ぽーとぶりっじ｣を通って渡る。

■６■その先のガーデン埠頭には､全長100ｍのオレンジ色の南極観測船｢ふじ｣が､船体まるごと展示されている。ふじは1965年(昭和40年)から18年間活躍した２代目の南極観測船なのだが、父がこの船体塗装の仕事をしていたことを思い出す。遥か遠くを龍のような形の雲が流れていく。海面の反射光が眩しい。

■７■遠くで港湾で働く人の音がする。しかしそちこちで鳴き交わす鳥の声の方が賑やかだ。静止画のようにベンチに座って動かない老人と花壇。光が固まったような明媚な光景だ。多くの観光客がいたらまた別の空間になるのだろうが、快晴の早朝のこの名古屋港界隈は、無人無料の異空間ワンダーランドだ。

■８■今後再訪しても、この同じ新鮮さは味わえないだろう。20年近く前に甥っ子姪っ子たちと水族館に来たのだけれど、記憶の質が今の空間と意識の中でなかなか繋がらない。ゆったりした臨港緑園の横にはトラス構造で全面ガラス張りの大きな無料休憩所ポートハウスもある。名古屋市の度量を感じられる。

■９■８時過ぎに名古屋港駅方向に歩くと、通勤の人たちがどんどん出てきている。人間世界の波が空間を満たして行く。何というか、魔法が解けて行くような感じだ。さよなら異世界､おはよう人間界｡人間の作る世界も素晴らしい。もう帰ろう。改札口から人々が溢れるように流れ出てくる。必ずまた来よう。

■10■始発駅なのでゆっくり座れる。また名港線から名城線にそのまま乗り入れる列車なので有難い。運河から海まで歩いたことでまた色々なものが繋がり広がった気がする。上前津乗り換え後もちゃんと座れた。８時54分御器所に着く。帰りしなに買った｢少年ジャンプ｣が、随分と現実の世界のものに思えた。

20241125 Monday