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■１■４時15分､外に出る｡晴れている｡月だ！久しぶりの月だ｡しかも満月。山王通りを西へ。久しぶりに月に向って歩く。明るくて嬉しい。荒畑、鶴舞南、ＪＲ中央線を過ぎて名城線の東別院駅交差点。ここで右折して大津通りを北上する。月は左手に移動する。大津通りの大津は海に繋がる通りだったとか。

■２■実は今日で夜間歩行を開始してから97日になる。カレンダーを見ると、初日が８月11日で、２日間があって、14日以降は毎日歩行中だ。このままいけば11月20日に100日目を迎えるわけだ。最初は真夏の暑さを避ける意味もあったが、今では汗が冷えると寒い。深草の少将の百夜通(ももよがよ)いかよっ。

■３■時は平安時代前期、絶世の美女小野小町に言い寄る深草の少将。小町は百夜通って満願の日、晴れての契りを結ぶことを約した。以来雨の日も風の日も、毎夜通い続けた。そしていよいよ満願の百日目の夜は大雪で、彼は疲労と寒さで力尽き凍死してしまうのだ。京都伏見の通い道は距離にして５～６km。

■４■舗装すらされていない坂道を、往復で10km以上を毎夜通い続けるのはそれだけて難儀だ。１日１個の榧(かや)の実で日を数え、少将の死後に99個の実が植えられたとも言われる。まあ当方は目する相手がいるわけでもないし、最近は公共交通も使っているので比ぶべきもないが、凍死だけは気を付けよう。

■５■名城線の円環をなす上前津・大須・矢場町・栄・久屋大通の各駅の外側をずっと辿る。栄界隈は非常に人が多い。ほとんどが若者で、家に帰らず夜を通して遊んでいるのだろうな。ああそうか、今日は日曜日か。道端に座り込んでスマホを見る娘たち。数人でつるむオタクっぽい子たち。カップルも多い。

■６■こちらもなりふり構わず両手をぶんぶん振りながら早足で歩く。脳内でバラバラだった記憶の中の街角が繋がって行く。点が線に、線が面に。久屋大通公園が尽きた辺りから人通りがガラッと減る。名城線が名古屋城駅で大津通りに重なる。５時27分。始発は40分。更に先に進もう。森の上の月が美しい。

■７■５時35分、名城公園駅に辿り着く。初電は５時38分。着替えずに乗り込む。背中に入れていた集めのタオルをするりと抜いてみた。汗はその上のＴシャツにほとんど残っていない。上着を着る。タオルはビニール袋に入れてカバンに。これはいいかも。久屋大通で桜通線に乗り換える。問題ない。余裕だ。

■８■車内から見える駅名パネルの色を確かめてみた。久屋大通は紅色。高岡は茶色。車道は緑。今池はグレーか。吹上は赤だ。で、次の御器所は何色なのだろう。青か、黄緑か、橙か、ピンクとか？ドキドキ…。駅に着く。何か地味～なブラウンだった。残念感抱えたまま外に出る。まだ暗い空に満月がいた。

20241117 Sunday