■１■外気温11℃。早足歩行には微妙な温度だ。今日は名古屋を南北に流れる堀川の端を辿り歩く。御器所から山王通りを西進して、ＪＲ中央西線・大津通り・名古屋高速４号線を抜けると堀川に突き当たる。直ぐ近くに中川運河と堀川をパナマ運河方式で繋げていた松重閘門があり、そこから堀川を北上する。
■２■堀川は江戸時代初期に建築資材運搬用に伊勢湾から名古屋城付近まで開削された運河であり、後に庄内川から取水を開始した。だから名古屋市を流れる小さな川だが、実は庄内川水系の一級河川なのだ。それぞれ歴史や雰囲気の異なる日置橋･岩井橋･納屋橋･伝馬橋･中橋･五条橋等を渡りながら遡上した。
■３■日置橋は橋の外側に黄色い欄干が２重についたような形をしている。大須通りが堀川を渡る岩井橋は土木学会により選奨土木遺産に選定されている。広小路通りが堀川を越える納屋橋のサイドビューは、お茶の水の神田川に架かる聖橋を思い出させた。ここの川に面する親水空間の通路はかなり好きだな。
■４■さらに北上して伝馬橋、中橋、五条橋までひたすら歩く。五条橋より西には結構好きな円頓寺商店街があるが、当然真っ暗なのでスルー。名古屋高速環状線と共に堀川を跨ぐ景雲橋の次の名前が分からない橋で、本日初めて赤信号に引っ掛かってしまった。せっかちなので橋の東岸の信号を渡ろうと移動。
■５■橋を渡ってみれば、そこには信号がない。立ち止まると背中の汗が冷えて寒い。仕方ないので坂の上に見える三叉路の信号を渡ろうと更に進む。坂上に辿り着いてみるとそこに横断歩道はなく、ぐるりと遠回りする歩道橋があるだけだ。仕方ないので渡っている時、そこが名古屋城に続く通路だと気づく。
■６■引き寄せ妖怪｢名古屋城｣!!転んでもただでは起きまいと、西のお堀をぐるりと回って、天守閣のシルエットを撮った。振り返るとホテルナゴヤキャッスルがある。大学以来の悪親友・故ケムイチ君が、娘と嫁さんを連れて名古屋に来た時、城が良く見えるここの階上で食事した事がフラッシュバックする。
■７■折角だからお堀の北西端にある隅櫓も撮っておくかと思って、堀の角まで歩く。そこから見ると西北隅櫓(重要文化財らしい)と外堀がいい感じに東の明け始めの空と調和している。角の信号の根元に黒猫がいた。近づいても逃げないので、カバンからカリカリを出してお供えする。もぎもぎと食べている。
■８■猫を暫く見守ってから立ち上がると、東の空が薄紫に明け始めている。夢中で写真を撮る。そしてこの際だと広角を使って猫と隅櫓と東の空を１つの画角に納めたら、何やらとても幸せな気持ちになった。この１枚を撮るために名古屋城にたぶらかされているふりをしていた自分がいたことに気がついた。
■９■他者には何の説得力もないけれど、自分と未自分の合作の１枚だと強く思った。そして気づく。何だ、名古屋城が大好きだったんじゃないか。背中の汗も乾いた。心同様足に取りも軽くなり、次の浄心駅まで歩いてから、鶴舞線に乗って帰宅する。朝は誕生。赤ん坊の泣き声は哀しみではなく喜びの歌だ。
20241110
Sunday
|