■１■夜歩きを始めて１か月ほど経った時、それまでの足跡を１枚の地図にプロットしてみた。名古屋の環状線でもある地下鉄名城線の輪の中に納まっていたことに気が付いた。まだ徒歩のみで１時間の縛りがあったので、御器所から片道30分で行ける限界は、確かにそこから先にはみ出すことは不可だった。
■２■帰りは地下鉄ＯＫのモードになってから到達距離はぐんと伸びた。最近は名古屋市の端をぐるりと走る名古屋第二環状自動車道の端を何度か超えた。距離が目的になってしまっては本末転倒だが、まずは地下鉄を利用して東西南北の到達可能な距離感覚を体得するまで、いま暫くは毎日はみ出して行こう。
■３■そういうことで今日は黄色の東山線に沿って、歩いていくことになる。
市内を東西に横断している東山線は名古屋市で最初に開業した地下鉄路線だ。日本国内でも有数の高頻度運行路線であり、大阪の地下鉄御堂筋線が2018年に民営化して以降は、わが国の公営地下鉄では利用者数が第１位を守っている。
■４■行きは川名から北進して広小路通に出て、本山からは地下を東山線が通る東山通に沿ってひたすら東進する。東山動植物園を過ぎると星ヶ丘だ。昔愚妻がここで河合塾の教室を持っていた時に来たことがある。さらに進むと一社駅がある。一社からの地下鉄は地上に出て、終点の藤が丘まで高架線になる。
■５■地下鉄なのに地上を走るのは、東京お茶の水で見た丸の内線をちょっと思い出す。御茶ノ水駅は大学受験時から、神保町の古本屋街行き、そして集英社・小学館の打ち合わせなどでよく行った。上社駅手前で今日も名古屋第二環状自動車道に出くわした。別所から３日連続でこの高速道路をくぐるわけだ。
■６■東山線の上社駅から本郷駅までは植田川の上を走っている。この川は一昨日、鶴舞線沿い歩行時に塩釜口の先で越えた川だ。その先で合流した天白川もまた、昨日桜通線沿い歩きで鶴里駅の先で越えている。名古屋高速道だけでなく川もまた３日連続で越えるとは。５時31分、東山線一番列車が走り行く。
■７■突然脳内で、半世紀前に八王子で友人が歌ってた曲が再生される。「♪遊び疲れて〜街を歩けば〜一番列車が走る〜♪」彼も彼の曲を歌う者ももういない。センチメンタルでも諦念でもなく、それらの記憶は未来と共にここにある。歩き回ることで土地の何かとより重なりどんどん好きになって行く感覚。
■８■東名高速を超くぐると、思っていたよりも早く藤が丘駅に到着した。洗面所で着替えて、5:50発の高畑行きに乗る。「過去に未来がある」という句の意味が歩くことで身に染みる。御器所に着いて地上に上がるともうすっかり明るく、そこには20数年前に初めてここに降り立った時の風景が広がっていた。
20241106
Wednesday
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