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■１■丑三つ時に目覚める。外は雨。天気予報では明け方には上がるらしい。知っている。しかしあと４時間もとても待てない。出発だ。今日は東区の小川交差点まで行って戻ってこよう。そこは愛知県名古屋市から伊那谷経由で長野県塩尻市に至る国道153号線の起点なのだ。国道153号線は時々登場してくる。

■２■吹上から新栄まで北西へ走る道に沿い、そこから500ｍほどで153号線は果てる。今日はその地を踏んでから､153という数についての数オタク的なウンチクを語ろうという段取りなのだ。氷雨。気温17℃。体感温度はそれより低い。今日はひたすら歩こうと決め、Ｇパンに長袖で傘をさしてサクサク進んだ。

■３■出発前の準備運動と、手をブンブン振り回す歩き方が効いたのか、早足で進むのが心地良い。そして突然閃き自得した。なぜ自分が毎日馬鹿のように歩いているのか。歩くのが好きだからだ。当たり前過ぎて今までそれを自覚することはなかった。意識化しなくても心身共にずっとその喜びを知っていた。

■４■中央線のガードをくぐり、広小路葵南の信号に到達する。そこを真っ直ぐ北上すれば目的地だ。初めての２度目だ。今度は間違うまい。写真を撮ってからぐんぐん歩く。思い付きをスマホにメモしながら進む。久屋大通公園の大噴水がある。名古屋タワーが見える。地下鉄栄駅の入り口傍に横路地がある。

■５■伊勢町通りに入ってみる。先日20余年振りに会った山口氏夫婦と食事をした中華｢梅園｣があった。何やら午前３時なのにやたらと人が多い。栄の歓楽街はこうなのか。｢オニイサン…｣私にまで声かけないでくれ。ホストも多数。そして薄々道を間違えたことに気づき始める。また久屋大通駅入り口に出た。

■６■名古屋城の案内看板を見て、全く別の道を歩いている現実に鷲掴みされる。初めての二度目ではなく、初めての二の舞をやらかしちまっている。国道153号線の起点には何か人(私だけだとしても)の方向感覚を狂わす妖怪がいる｡土地と人との相性の如きもの…。妖怪を想定すれば因果も破綻なく機能する。

■７■｢二の舞｣とは古代の舞楽である伎楽の曲名で、安摩の舞の次に舞われる答舞だ。前の人の真似をすることの意が転じて、前の人と同じ失敗を繰り返すという意味でも用いられる。｢二の足を踏む｣は、一歩目は踏み出したものの、二歩目は躊躇って足踏みする様子。｢二の舞を踏む｣も｢妖怪帰結｣も誤用だが。

■８■今日は意地を張らず、スマホで小川交差点の位置を確認。名古屋タワーの横を通り、高岡駅を過ぎて、ついに153号線の起点に辿り着いた。なんか感動が薄い。取り敢えず写真を撮って、降り続ける雨の中を帰路に就く。しかしまたもや広小路葵南交差点で道を間違い鶴舞まで歩いた。やっぱ妖怪がいる。

■９■途中で見た｢千早｣という名。草冠を付ければ｢千草｣となる。既に｢千種(チクサ)｣という地名はあるけれど。｢ちはやふる｣は神や宇治に掛る枕詞で勢いが激しいという意味だ。休むことなく歩き続けて､帰り着いたら午前５時を過ぎていた。てかこの時点で雨が上がるのかよ。153についてはまた後日なり｡

20241030 Wednesday