45023

■１■窓を開けると目の前に下弦の月。月齢は21か。念入りに準備運動をしてから外に出る。今夜は月を背に30分間西進しよう。その先はその場で考えること。御器所と桜山の間で直交する市道池端町線支線第１号を道なりに辿り、名古屋高速３号､ＪＲ中央本線､新堀川､大津通りを超えて､国道22号に辿り着く。

■２■Ｕターンするのも味気ないので取り敢えず右折すると、すぐに30度ほど右に折れた道があったのでそこを歩く。帰宅後調べたら下街道という道だったが、歴史的に下街道とは名古屋宿から中山道槇ヶ根追分までの約61kmの街道だった。起点からは少しずれているが、アーケードのある立派な商店街だった。

■３■さらに太い通り(大須通り)を超えると、いきなり大須通り商店街に出くわした。仁王門通りだ。右に折れて懐かしいアーケードを歩く。20年以上前に名古屋に来て、最初に気に入ったのがこの大須商店街だった。今でも大好きな場所の１つなので、初めて全閉店で人影もない通りにテンションが爆上がる。

■４■お店の前に生ごみ袋が点々と出ている。なるほど、早朝にゴミ収集車がこれらを一斉に回収するのか。初めての２度目と言いたいけれど、雑踏の中でしか見たことがない商店街が、全く見たこともない無人の空間だった。願わずも独り占めしていたら、上前津駅のある交差点近くに出た。左折して鶴舞だ。

■５■大須から鶴舞に向かう通りは、先日「タクシー下車後泥酔で立ち上がれない男事件」の現場があるのだが、全く別の感慨と視角からの１kmだった。こうやって様々な断片的な記憶が体を介して繋がって行くのは心地よい喜びだ。鶴舞公園を右に迂回して南端を歩くと、1.5kmで御器所駅のすぐ近くに出た。

■６■最近は防犯の意味もあって、裏道を通過するとセンサーでライトが点くようにしている家も少なくない。最初の頃は盗人候補として照らされるのかよとちょっと不快だったが、今では足元を照らしてくれる有難い装置だと思うようになった。深夜のカラオケから下手糞な歌が漏れてくるが、余裕で許せる。

■７■３次元的な過去･現在･未来と言う時間概念もあるが、むしろ眼前の今が常に未知なる未来とも感じる。敢えて過去と切り離さなくても常に新しい。むしろ過去の記憶がないと新しすぎて今が定まらない。現状に完甘しても進歩はないが、世界を悲惨と否定描写する者は、先ず自らの内が悲惨な様なのでは。

■８■今日も少し早足多めだったので、帰路は少し疲れ気味だった。19度Ｃ。半月が有難い。最初の頃は裏道などで突然現れてすれ違う自転車や歩く人が、殆ど異形の生物か妖怪のように感じていたけれど、最近は昼には巡り合えない稀なる人間として好ましく見るようになった。自己他者も様々であって良い。

20241024 Thursday