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■１■午前３時、気温14度Ｃ。いつもより少し厚いＴシャツを着て外に出る。月を探す。ほぼ真上に十八夜・居待ち月があった。隣りに輝くのは木星か。良く晴れた夜空で、そこに在ってくれるだけで有難い。御器所からの山王通りから１本南寄りの太い道路を東へ800ｍ進んで、突き当たった檀渓通りを右折。

■２■檀渓通(だんけいどおり)は通りの名前でなく町名だ。道路は愛知県道30号関田名古屋線という味気ない名の基幹路線の１つだが、最初に檀渓通に出会った時、ドイツ語で｢ありがとう｣である<ダンケ(Danke)>を連想して、勝手に｢ありがとう道路｣と呼んでいる。由来は当地の住職檀渓和尚らしいが無視で。

■３■その道を３kmほど進むと、瑞穂運動場を含む名古屋市瑞穂公園東に出る。今日は少し小走りも挟んでいたのだが、ここで右折して公園を横切り、猫々ハウス前の塩付通りまで道なりに戻ることにした。塩付通も町名だが、塩付街道に由来している。古代より名古屋(知多)で取れた塩を山国に運んだ道筋だ。

■４■これと重なる飯田街道は信州飯田まで続いていたというが、瑞穂運動場をぐるりと回って、見慣れた道を逆側から辿り進む。１本の道を往復するだけでも景色が違って見えるが、別の初ルートから回り込んで、その道を逆に進むと、同じと違うを同時に味わう。この感覚を｢初めての２度目｣と呼んでいる。

■５■難しく表現すると、360度でなく720度回転して対称性を取り戻すスピン１／２に似ている。あるいは正６面体を面点変換してできた正８面体をもう１度面点変換すると正６面体になることを知って、初めて２つのプラトン立体が１つことの２つの相貌であると知ることに似ている。３度目以降とは別事だ。

■６■初見のインパクトと同様に、既知なるものとして初めてそれを見る視座に意識を向けられれば、それもまた想像以上にインパクトがある出来事だ。毎日目にするよく知る万物すらも、初めての２度目を見る視座があれば、様々なものとことは新鮮で驚きがある。そして二而不二を越えて数は３から始まる。

■７■頭上の居待ち月の形は見たことがある。半世紀以上前の『ポーの一族』の中で、エドガーが吸血鬼になる夜の月だ。一族のことを知り夜の森に逃げるが、妹のメリーベルを抱いたポーツネル男爵が「お空に放り上げるよ」と言ってエドガーを呼び出した時の月の形だ。萩尾望都はなんてリアルだと思った。

■８■たまに膝や足など、色々な体の部分と確認し合って小走りを入れる。大体電柱から電柱の間くらいを、両手を目いっぱい振って早走りする。無理せず、負荷を少しだけ与えるという、あわいの意識で体と対話する。２か月前の歩き始めからは、ほんの少しだけ体力が付いた気がする。急がず怠けず転がる。

20241021 Monday