METATRONIC METALOGUE 15

061 ｢戯言｣と書いて何と読んでもらえるか

■１■一つ気が付いたことがある。思慮深い人はあまり質問しない。その時々の条件反射的興味や不安からの質問をしない。未知なことを未知のまま自らを保つ。未知に不安を抱かず、信頼と自信を持ち、時に耐える胆力がある。内面に永きに渡るテーマを持ち、ここぞという時にそれ沿った質問を発する。

■２■安直な問いの空撃ちをやめよう。答が見えない疑問や出所の定かでない不平不満を脊髄反射的に口に出す生き方は、共通の世界に不毛な負荷を与えすぎる。それらの朦朧とした思考未満や自家中毒的な情動が平面的世界観を強いる。自問自答でなく内の半神と外の半神の交差する場を意識の場としたい。

■３■口に出して言えないことは沢山ある。職業上の守秘義務とか、ポリコレ配慮とかそう言う類いの話ではない。社会的平衡感覚や自己保身や他者への配慮の話でもない。言語化できない無数の生命波紋。思考以前の知や、内臓の捩じれと区別のつかない情動。それらを使い捨てのオノマトペで口にする。

■４■口に出して言えないことは沢山ある。しかしそれでもやはり人間が言葉を口にするということは素晴らしいことだ。口に出して言えないことは沢山あるということを口に出すことによって初めて、口に出して言えないことは沢山あるということの輪郭が伝わる。この可知と不可知の界面に時が流れる。

■５■「戯言」と書いて<たわごと>と読ませると、その意味は「ばかばかしい話、ふざけた話、中身のない発言、いい加減な発言」のような意味になり、<ざれごと>と読ませると、「ふざけてする事柄。冗談事」といった意味になる。とちらかと言うと前者はネガティヴで後者はポジティヴ。ルビの重要性と味。

20240620 Thursday

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