■９■万物にも魂や霊等の何らかの精神的な性質を持つと信じ、それを擬人化してやり取りする日常の生き方そのものを、<アニミズム>あるいは<１つの特殊な宗教形態>として捉え見るだけの客観的視座よりも、その主客双方を自覚した上で、実際に世界万物とそのように人間として生きられる事の方が最重要問題だ。
■10■神道とは日本民族の神観念に基づき、日本語空間であるわが国に発生・展開した伝統的な宗教的理念と実践、及びこれを支えている私達の生活態度のことだ。教祖も教義も持たない自然発生的宗教であり、主として日本人の間で行われている民族宗教だが、無神論者として自立することも自然な豊穣性がある。
■11■名も知らず未だ見てもいない<もの>と<こと>すらも含めて、折りに触れて勃発する神羅万象を八百万の神と捉え見るが如く「自分の周りにあるあらゆるものが好き」という情動が湧出し、身を包み弾けんばかりに駆け巡る時、カミとワタシとが不二になるその時、それもまた夢幻だと語る輩にはなりたくない。
■12■神は本来目に見えないもの、あるいは見てはならないものという観念はまた、人間の身体的作用として幻視や錯視で神秘体験として捉えたものに過価値や優越感を置かぬような配慮もそこに見る。八百万の神ならば全て見えるものが神でもあるのではとも問えるが、見え方の総体をそう表現するのも一理ある。
■13■目に見える神器としての十種神宝や三種の神器などはある。祭祀その他で神が依るべき物体としての依代や、山や磐座など神が宿るとされる神体というものもある。満ちる信仰心や生命力を、身体を介して世界との関係で定まった向き付けを与えるための、仏教における曼荼羅などにも似て、とても人間臭い。
■14■鏡に映る我が姿を見て、他者とは絶対に共有できないナルシシズムにはまり込んで病むのではなく、我々の視覚認識能力に則って視座の軸がいかなる時でも覗き込めば必ずそこに映る自らの半神として、驕りも卑下もなくそれを敬い尊ぶことができるなら、それはこの上もなき神器として有益なのだけれど。
■15■十種神宝や三種の神器に乗せられている概念と、自らの世界観や宇宙論の概念とを重ね合わせて同じものだと提示することにさほど意味は感じない。それは自分自身の内での確認であって、他者に明示して他者の学習に負荷や混乱を増やす手法は、どこか安易さと自己増大であり、学問の檻の中だけにしたい。
20231223
Friday
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