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■１■『逃げ上手の若君』の松井優征氏の言語感覚は本当に素晴らしい。現代日本語でも、親密であれば最大の強勢表現には「何しくさりやがっていらっしゃるんですか？」とか敬語と罵倒語を混在させたものになり易い。｢鬼可愛い｣とか｢クソ優しい｣とかの系列である一文一句での罵詈雑言と敬愛表現の混在。

■２■松井氏は以前にも『逃げ若』の中で、「御」と言う字を一つのセリフの中で｢おん｣｢ご｣｢きょ｣などとわざと混在させて使ったり、主人公の名前に現状や価値でルビを入れ、状況や値段をさらにそのルビに順次ルビを重ねていく表現など、日本語の最先端をマンガを通して切り開いている。最高にクールだ。

■３■改ざんできない過去の史実に基づきつつ、独自に解釈し現代風にアレンジして表現する、松井優征氏の語り部としての才能は超一品だ。ここのところの美貌で才覚に溢れる顕家卿の「余の高貴なすっぴんにいつまでも見とれるな」というセリフとか、何気にしびれる。しかし魅力的な顕家卿のフラグが…。

■４■顕家卿はあの三十三間堂を端から端まで弓で的を射抜いた人でもある。マンガの盛り込みを理解しつつ歴史の方にも興味が向けられるのも結構幸せ。マンガは本当楽しい。誰も全てを満喫はできないが、個人的にはマンガをちゃんと読め、かつその楽しみを存分に味わえて本当に良かったとつくづく思う。

20231204 Monday