■１■詩人河村悟氏のフレーズに「あなたのあなた」という表現がある。自己他者問題的に解釈する場合、それは単なる「私」を指す表現でないことは分かる。しかしこの詩的表現に対して、「このようなものを指す」とか「こういう意味だ」などという紋切型な解釈をすることは、詩人を困惑顔にするだろう。
■２■かと言って逆に神聖視して、一切勝手な解釈をすまいと言う禁欲的な扱い方も、詩人をあきれ顔にしてしまうだろう。ということで、的外れもまた良しという思いで、私はこの「あなたのあなた」は「補色の補色」という表現を用いることで、あえてひとりよがりの同型対応的な解釈をしてみようと思う。
■３■色相環というものがある。ニュートンは自然光をプリズムを通すことによって虹色に分光した。この人間の可視光帯域のスペクトルの両端部分、紫外線と赤外線へと続く不可視領域とのあわいをくるりと重ね合わせ、その重畳部分に単波長としては存在しないマゼンタを布置することで円環にしたものだ。
■４■原色、２次色、３次色等を混合して360度の円環に閉じ込め､その人間の色としての色相環上における調和・不調和を元にして、デザインや心理学において様々な色彩理論が構築されてきた。この調和不調和は人間の快不快、美醜感覚とほぼ重なる。色調の配置補正によって様々な色相環モデルが存在する。
(※)この画像と次のは「イメージングソリューション.」より借用加工しました。
■５■この色相環において対の位置にくる色同士を補色と言う。補色同士を混色すると白色もしくは黒色となり色はなくなる。一方から見て、補色対を結ぶ線に対してその左右の同じ角度にある対の色を混色すると、対の位置の補色になる。さらに片方の色から見て他の全ての色を混色しても、その補色となる。
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■６■赤と緑の補色関係を自己他者問題に重ねて見よう。赤から見て赤以外の全ての色を混色すると補色の緑になるということは、私(赤)にとって、あなた(緑)は私(赤)以外の全ての世界(全ての色)を裏後に重ね持ちつつそこに在る。同時にそれはあなた(緑)側からも、同じ関係をそこに見ることができるのだ。
■７■私にとってのあなたは私以外の全ての世界を反転内包した形で眼前にあり、そしてそのあなたにとってのあなた、と表現された私は、単なる個人としての存在だけでなく、その背後に２重に反転して収められている世界の集約点としての私であるということになる。「あなたのあなた」は「補色の補色」。
■８■もちろんこれは、現実とは完全には一致しない理論的な概念表現だ。強固なのはその理論の方であり、人間の世界の捉え方・認識の仕方のカタチ・構造の方である。世界を変え自分を変えるには、先ずは自分自身の、そして人間の世界の捉え方と記述の仕方を、明確に自認自覚しなくてはならないだろう。
(※)画像右は「transxcode.com.」より借用加工しました。
■９■自らの自我や妄想や欲望や歪み偏りから目をそらすことなく良く知り、それを否定して今とは別の世界観や新しい生き甲斐を追求するのではなく、それらを他者とは異なる自分自身の特性として、より良い未来と繋がる方向に伸長・展開・反転していく可能性を見定め、実践しゆく潔さが必要なのだろう。
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■10■もちろんこれもまた個人的な妄想であり、ひとりよがりなものの見方である。だからと言ってこれを否定したり卑下したりすることもなく提示して、一人では気が付けなかった盲点や欠点の指摘を賜りつつ、より良い方向性と未だ未知なる未来の姿を捉えゆくものの見方を共に探していきたいものである。
2018.12.26
Wednesday
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