#214　コーヒーカップの横２メートル

■１■コメダ珈琲店に入ってカウンターに座ったら、近くに爆睡している客がいた。少ししたら昭和警察の警官が２人やってきて、迷惑だから起きい下さいと声をかけ始めた。お店に迷惑がかかるから…というものいいから、長時間ここにいたのでお店が困って連絡したようだ。鞄の中身をみせてもらいますとも。

■２■「調子悪いのですか？」と何度も声をかけるが、口を聞かない中年女性である。命に別状はないらしいが、薬か何かの影響もあるのかもという疑いがあるようだ。朦朧としているらしく、なかなか目を覚まさない。警官は２人ともかなり若い。私のわずか２席隣りで事件の尻尾が進行中？携帯電話も見られてる。犯罪の臭いも？

　　　

■３■携帯電話から警官がその中にある番号に電話している。「あ、もしもし…突然電話して申し訳ありません…」と言いながら外に出て行った。プライバシーとかの問題もあるんだろうな。「調子悪いの、ねえ？」若い方の警官の口調も少しいらついて聞こえる。「よし、お母さん、行こうか」と言うが動じず。

■４■女性は椅子に座り、目を閉じて下を向いたまま両手をだらりとしている。店長と話をする警官。「よし、行くか」と言う戻ってきた警官と２人して、抱きかかえるようにして連れ出して行った。足もだらりと垂れたまま、意識不明の病人のようにずるずると。心配そうな優しい目のカップル。でもほとんどはシカト。

　　　

■５■私が後から入店したからだけれど、店からはなんの説明もないままだった。一体何だったのだろう？事件や病気でなければいいけれど。何も分からぬまま、カウンターに残った私。やがてその開いたカウンターの席に、後から入って来たおじさんが新聞をバサッと置きながら座った。多分何も知らない。

■６■先にいたお客よりは状況を知らない私だが、このおじさんはさらに何も知らない。何も知らないことは何もなかったことと等価だ。私は中途半端にぶらさがったまま、妙な違和感だけが残っている。何となく世間や世界は私にとって、かように分からぬまま進行していくのかという感慨。うまくまとめ過ぎたか。　

2011.11.19 Saturday