#078　どす黒き愚鈍物体の末路

■１■原発が絶対に肯首できない理由その１。存続稼働させるには必ず被曝労働者が必要だということ。多くは闇から闇に葬られ、また原発労働者に対する差別構造が存在するが、事故がなくても日常労働で被爆者が出続ける事実。推進派が自主的にやるならまだしも、人間の使い捨ては絶対に許さない。

■２■その労働者の少なからずが５年10年15年後に癌で死んでも、因果関係が科学的に認められていない云々で、どれだけの人を人間として扱っていないか分かれば、根本から非人間的であることが愚者でも分かる。人殺ししながらつかう電気しか使えない構造そのものは今後変わらねば人間が朽ちる。

■３■そして子供や妊婦やその他の人間にもその死と恐怖の可能性を課して平然としている者たちは、もはや人間に戻れない魑魅魍魎以下のどす黒い愚鈍存在の一歩手前であろう。自他への謙虚さを失い、他者を見下す者たちは、自分が最後通牒を突きつけられている本人だという現実を感知できぬのか。

　　　

■４■どす黒い愚鈍存在が大口を開けて待っている不帰の虚無に落ち込んで２度と戻れないなら、定めとして放って置けという意見もあるが、それらはどす黒くはないけれど能動的に諸事を判断する傾向にない素直な人たちをも巻き添えに引き連れていくに違いないから、静観ではなく糾弾し続けるのだ。

■５■他者の犠牲や苦痛の上に自らの生を伸ばそうとする者は、今後どんな現実に遭遇するかイメージすらできぬのだろう。地獄ではない。現実そのものが変転しゆく先に、真っ当な人間という名のパンツ１枚すら穿かずに、人間超えできぬまま現実に被曝して消滅する。人間として生きる最後のチャンス。

■６■これは自分のことでないと考えるものに対する呪詛でもあり、自分の中のこのような部分を改めて良く考えてみようと思うものに対しては不要の言明だ。それにしても原発施設は全然美しくない。施設造形そのものの醜悪さは構築者の至らなさの写し絵そのものだと思う。私はまだ「人間」が好きだ。

　　　

■７■幸いなことにビン・ラディンを国家が殺害して、それを大歓喜する感性は今の日本にはない。しかし自分たちの宗教以外の者には民主主義も法的秩序も認めず、搾取する家畜同様の存在として見る独善的世界観は、私たち日本人の意識の中にも相似形としてインプラントされている。自覚すること。

■８■他人・他国が陳腐な学芸会をやっているのはもはや良く見える時代になって来ている。しかし自身・自国の中にあるフラクタルな構造にはなかなか気付けない。意識の変数をちょいと帰れば、その自己相似形はすぐに変わる。欲望の中の癌を自己治癒力で治す。日本人にはまだその可能性がある。

　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　(※)These photos were taken by Tony Harrison.

2011.05.04 Wednesday