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■１■これまで綿棒多面体の多層構造、つまり内側と外側に２重、３重あるいはそれ以上の構造体を多重に入れ込む構造体を作る時、その間の頂点間を可能な限り全て接続する手法を取って来た。例えば｢星の種｣の上に｢星の籠｣を接続したり、｢星の籠｣と正12面体を接続するのに、それぞれ60本を用いていた。

■２■2022年初頭に兵庫県明石で綿棒多面体の最新作の展示会があった。その時撮影した画像を後で見直してみると、多面体の中に多面体を入れ込むセクションＳの作品群の中に、内外２層がわずか綿棒６本で固定されたものが複数あることに気が付いた。しかもそれは黄金比を介した接続に限定されないのだ。

左よりファージＴ４模式図(wikipediaより)、セクションＳ作品、ガチャのアイテムのT4

■３■この接続方法は、2021年の前半にセクションＳがバクテリオファージＴ４(※1)を綿棒多面体で作ろうとしていたのだが、ファージの頭部(実際に20面体系の形状をしている)と尾部をいかに接続するかの試行錯誤の延長でもあった。綿棒自体の自重負荷に負けなければ、より大きな多面体を多重に接続できる。

■４■まず上の画像を見てみよう。正20面体の中に左から、正８面体･｢時の種｣･１辺が１／√２の正６面体(あるいはケプラーの星形８面体)が入っている。また下段には同様にして｢星の籠｣の中に、左から正８面体･｢時の種｣･１辺が１／√２の正６面体が、それぞれ３軸方向の対の位置の６本で固定されている。

上段と共にセクションＳの展示作品より

■５■これは３次元空間で内と外を安定して固定するために、綿棒自体が通常のテンセグリテイ(※2)における棒状の圧縮材とワイヤ状の緊張材の両方を兼ねており、回転によって圧縮材と緊張材の役目を連続的に交換する非常にシンプルな構造であると言えよう。正４面体の６本の稜線の在り様も連想させられる。

■６■さらにこの綿棒６本による綿棒多面体のミクロ-マクロ方向の接続は、大きさが適切であればその内と外の組み合わせには相当な自由度がある。内に星の種やその様々なグループを入れ込むこともできるし、時の種を内部で動かすこともできる。その場合は接続している６本の綿棒は、本体と連動して動く。

関連動画⇒ YOUTUBE ■101;綿棒多面体と内部テンセグリティ

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(※1)バクテリオファージ…細菌や古細菌に感染して複製するウイルス。動植物細胞に感染するウイルスに対して、細菌に感染するものの総称。生物圏で最も一般的で多様な存在で、有害な細菌などを破壊するものは善玉ウイルスとしても捉えられる。

(※2)テンセグリティ…Ｂ・フラーにより提唱された概念で、tension(張力)とintegrity(総合)との造語。構造システムが破綻しない範囲で、部材を極限まで減らしていったときの最適形状の一種でもある。

20231223 Saturday