＜石狩平野へ＞

　ヒットポイントを回復したらしいるしえる兄ぃは、再び赤い流星号のハンドルを握ると、十勝から石狩まで続く石勝樹海ロードをさらに西に向けて走らせ始めた。この石勝樹海ロードは国道２７４号線に含まれているのだが、「この２７４という数字に地球の１年３６５日を掛けると１００００＋１になるのだがな」などと考えている私にはお構いなしに、車は淡々と夕張方面に向かう。

　雲間から太陽が顔を出したかと思うとまたすぐにフロントグラスを濡らし始める、いわゆる山の天気を味わいながら、ぼちぼち今日の宿を決めておかねばならないなと思い、今日これから会う約束をしていた札幌のしぃさん（白戸氏）に連絡を取る。しぃさんはおそらく手元の温泉情報誌を見ながらなのだろうが、スラスラと４つほどの温泉宿の電話番号と所在地を教えてくれた。見た目と違って妙にきっちりと事務的能力もあるるしえる兄ぃは、早速携帯電話で宿の予約を済ませてしまう。

　道路状況や悪天候などもあるのだろうが、北海道の道路はみんな気持ち良くて走りやすいという感想は、どうも少し違うようだ。札幌方面に向かう車たちは、明らかに帯広方面の車より何か急いでいるように飛ばしている。道を良く知っているからなのだろうが、濃霧の中のスピートといい、少し東京のようなせかせかしたものを感じてしまった。そして闇が周囲に滲み始め、ふと気がつくと流星号はいつしかとっぷりと夜の走行に。

　１０万分の１縮尺のページと２０万分の１縮尺のページを渡り歩きながら、方向性は押さえつつも距離感を喪失している私は、夜の闇の中でついに方向感覚もロストしてしまった。由仁をかすめ、長沼を通り、かなり近づいていることまでは分かるのだが。広々とした石狩の田畑の中でロングディスタンスのナビを放棄する。るしナビの発動である。彼は「うん、運転しているとなんとなく分かるんだよねー」などと言いながら、さほど躊躇もなく最短距離で今日の宿泊地「南幌（なんぽろ）温泉ハート＆ハート」へ滑りこむ。「だったら最初からやれよなー！」と思う私なのだが、それはまた叶わないというものらしい。

画像情報／上右：車窓より。濃い霧が林や丘を舐めて、道路までにじり寄る。
　　　　　下右：車窓より。日高山地を越えると、青空が広がっていた。樹海ロードはいつまでも一本道。

とらしえじゃぱん点線記２−２２（２００１０９１０−３）

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