031bite

20010521

　ここのところ毎日、時間を見つけてはプラトン立体の対称性や双対関係や回転対称軸の話を書いている。中でも時間がかかるのがその関連図形を描くことだ。自分のホームページとＢＯＢのヌースアカデメイア双方にアップロードするためのものだが、疲れ果ててふと、自分は何のためにこんなことをしているのだろうと自問してみた。

　お金にはならないので、経済的理由ではない。自分はこれだけのことをしているのだという自己顕示欲を満たすためかというと、それならもっと効率のいい方法を知っているのでそれでもない。いろいろ理由をつけてみようとしたけれど、その理由は単純明快で、やっぱり楽しいからの一言に尽きるようだ。

　昔、藤原さんという科学者がいた。ＢＯＢに物理学の初歩からを教えた人らしい。ＢＯＢの兄貴が、彼に最初に街中でかけられた言葉が「ＵＦＯの機長を知っていますか？」だったという。福岡に遊びに行った時初めてお会いしたのだが、出された料理を「このプロトンとニュートロンとエレクトロンの絶妙の絡み具合が…」などと評しながら、口に運んでいたのを強烈に記憶している。

　「立体らせんをイメージできるか？」といきなり質問してきたり、「次元は何も１，２，３，４…と飛び飛びの整数である必要はないし、２次元が３次元より上だとも言い切れないだろう」などと自信たっぷりに語っている藤原さんを見て、正気と狂気のほかにも超正気というものがあるかもしれないと思ったものだ。フラクタル次元とか位相幾何学なども知らない、のんびりした当時の私…。

　当時まだ中学生･小学生だったＢＯＢの姪っ子たちが、そんな大人のフリーエネルギー製作話や周囲の精神的危機状況に関係なく、ほがらかに笑いさざめいていたのも印象的だった。チャネリングなどという言葉もまだない当時から、「超越的な上位存在ならば、こちらがいくら生意気言っても、進化を助けてくれるに決まっている」と決め付けて（そして私は正しいと思った）、もっと分かりやすく表現しろとチャネラーを介して、目に見えないそれらに詰め寄っていたのも忘れがたい。

　私がその後、彼にあったのは１０年ぐらい後のことだった。当時の友人から連絡が久しぶりに連絡があり、藤原さんが療養所に入院しているというニュースを知らされ、ＢＯＢたちと一緒に、神奈川の山奥の病院に見舞いに出向いて行ったのだ。その時の藤原さんは、すでに活力は萎え、体も凋んでしまっていた。そして何より、口にする言葉の言い回しがすでに古臭く感じられたのに、私たち自身が驚いた。

　今ではそれからさらにまた５～６年経っている。ＢＯＢの姪っ子たちももうすでに、立派な母親や海外留学生になっていたりする。そしてひょっとしてあの藤原さんも、もうこの世の存在ではなくなっているのかも知れない。そしてふと我が身を振り返って見ると、当人の意志に関わらず、当時の藤原さんのように見られているかも知れないと思った。私は２～３度しか会っていない藤原さんのあのノリが好きだった。

　はたしてやりたいことをやり続けている私も、やがて藤原さんのように凋んで古臭くなる日が来るのだろうか。それとも小出しに小出しに狂いつづけながら、正気を未来へ続く道を見出せることができるのだろうか。それが実際はどうであろうとも、どう生きても一生。私は私の一番やりたいことをしながら生きていくことを選択したのだし、それが自分にとって一番面白いし、幸せな人生なのだ。ただ願わくば、ひとりよがりの王国を超えて、他の人とも未来世界を共有していけたらいいのだけれど。

テラバイト日記（０３１）