 20010504 20010514rep.
巷ではいわゆるゴールデンウィークらしいが、私はライトスタッフのホームページ製作で篭りつづけていたので、今月１回限りのテラバイトも外に出る名目としてはばっちりだった。しかもゴールデンウィークに入ってからずっと雨がちだった天気も、今日は打って変わったようにいい天気。基本的に私は晴れ男なのだ。
寺に着くとなにやら雰囲気があわただしい。聞けば何やら急遽、和尚さんが夕方までに島根県のお葬式に行くことになったらしい。午前１１時スタートの今日の法事が終ったら、和尚さんは速行で羽田空港に向かい、休み中でチケットを取るのに苦労した飛行機に飛び乗る算段になっているとのこと。
確かに人が他界するのは予告どおりの定時というわけにはいかない。しかも東国寺の檀家だったその亡くなった８７歳のご老人が、遺言で自分の葬式には東国寺の住職を指名してあったということだ。いつもゆったりしている和尚さんも、今日は心なしかきびきびしている感じだ。しかしいつもは大体時間どおりに揃うお客も、今日はめずらしく数名が遅れてしまっている。
全員揃うのを待たずに定時に鐘がなり､法事が始まる。私の今日のノルマは全館の廊下と階段のＰタイルを磨き、ワックスを塗ることだ。それから法事の後かたづけ。窓の外の陽射しがあまりに心地よさそうだったので、仕事の合間に浅草通りに出てみると、たくさんの人が５月の柔かな陽射しの中を、三々五々ゆったり歩いていた。上野から浅草までの大通りの両側は、まるで「グランドジャットの日曜日」のように、光の輝く点描画だった。
つつがなく法事は終わり、和尚さんは島根へと向かう。午後の仕事も一段落した頃､奥さんが買い物から戻ってきた。柏餅とお団子を買ってきてくれたので、それをお茶受けにティータイムとあいなる。その時、ふと愛ちゃんの名前が出た。「さて今ごろは異国の空の下、一体どこで何をしているのでしょうねえ」と私が言うと、奥さんが驚き顔で言った。「あらやだ、私はもうとっくにみつまろさんには連絡が行っているものとばっかり思っていたわ。愛ちゃんから先月末に電話があって、今日本に帰って来ているんだって。」
「え、ほんとですか？」と私。「何でも日本でバイトをしてお金を貯めるらしくて、お寺では仕事ありませんかって言ってた。みつまろ君は元気かって聞くから、連絡してあげればと言ったら、うん、そうするって…。なーんだ、もうとっくに知っているものと思ってたのに。」そういえばここのところホームページホームページ作りでインターネットにアクセスしている時間が長かったけれど、私のところはＩＳＤＮやケーブルではないので、回線が塞がりっぱなしだったっけ。それに携帯にも何度か、名前のわからない着信履歴が残っていたけれど、それかもしれないなあ…と思っていたら、奥さんが連絡してみなさいと言った。
はい、と答えたけれど、愛ちゃんは多分、日本でバイトして海外での生活の資金にするために、一旦帰国したのではないだろうか。ゴールデンウィークはダメだとかと奥さんに言っていたそうだから、もうバイトしてるのだろう。会えるときは会える。会いたいときは、会おうとする。それにしても、私は今ここで何をしているのだろう。いつでもどこでも、その時そこにいるのが場違いだという、この感覚…。
５時のサイレンが鳴っている。本当に日が長くなった。さて後は一気にワックスがけだ。全館パトロールのミミ猫がやってきて、本堂の座布団の上にぱふんと座る。和尚さんがお経をあげる時に座る、あの赤ん坊のベッドより大きい座布団だ。その中に半分のめり込みながら、ミミ猫は私の仕事具合をチェックするかのように、こちらを見詰めている。はて、和尚さんは飛行機に乗って、無事島根に着いたのだろうか。
テラバイト日記（０３０）
|
