（０９５８）立体裸眼視で世界を見よう

知らないということを知らないと知っていると思う。

　しかしそうは言ってもこの時間と空間の中で人間として生きていて、年がら年中変わらずに幸せだと感じている者もかなり狂ってしまっている。幸せな私たちはきっと不幸すらも味わいたくて、あえて全て忘れてここにいるのではないだろうか。でもそのあえて忘れたということ自体を忘れていると、とても辛い。

　借金苦から死ぬことばかりを考えている人。身の内の肉欲に囚われて、セックスのことばっかり妄想している人。愛されていないと思い込み、孤独感で気が狂いそうな人。才能も美貌も運もない、ハズレくじの人生だと感じている人。このままの状態が続くのならば、いっそ天変地異が起こったほうが面白いと夢想している人たち。正直なところそれはまったくの他人ごとではなく、他ならぬ私の一部の反映でもある。健忘症で、意志薄弱で、依存心が強くて、それでも虚栄心だらけの私自身の投影図。

　でも天変地異なぞを期待する必要はないのだ。無意識にでもそのようなものを望む人が多ければ、それに対応した外的共通世界でも何らかの破壊的現象が起こりかねない。このままの状態がつまらないなら、辛いなら、そうでなくなればいいのであれば、世界の見方をちょっと変えてみようではないか。もちろんこれまでの普通の見方を消し去る必要はない。それも等しく重要だ。それはそれで大事にとっておかなくてはならない。

　世界の見方は１つである必要はない。いやむしろ最低でも２つある方がいい。定常波に参照波が干渉するとホログラフが立ち上がるように。もしくは３Ｄアートもしくは立体裸眼視のコツをつかめば、写像からそれまで見えなかったものが飛び出てきたりするように。まずものが普通に見えなければ、それが立体に見えたってそれだけの世界だ。目の焦点深度が２つ以上あって始めて、自分が能動的に見方を変えることで世界の見え方が変わるのが実感として分かるというわけだ。

　この世界には幸せな人たちもわんさかいる。自らの力でより明るい未来を切り開いていける人たち。私は勝手ながらそのような人たちに、心からの励ましと感謝の気持ちを送りたい。頑張れ、あなた方は時の波頭を生きている。そして幸せでないと思っている人達にも未来はある。未来はあるのだ、世界を見る目が単眼でないならば。そして本当に自分自身を愛することが出来るならば…多分。多分と言うのは、私もそう自信があるわけではないからだ。言うは易く行うは難し。まったく、自分自身を本当に愛することは難しい。しかし実はとても簡単なことなのかも知れない。世界を立体的に見ることが出来たならば、ひょっとしてそのヒントが頭をフッとかすめることがあるかも知れないのだ。

未来につながる温かい数（２）