 全ての人は個人として生まれてくる。そしていかなる環境の元でいかなる教育がなされたとしても、その世界を見る目は２つとないユニークなものだ。その独自の世界の見方を犠牲にすることなく、他の全てのものと調和して生きるためには、まず自らの世界観そのものに目を向けなくてはならないだろう。自分の世界の捉え方は自分の知覚認識とこれまでの経験から形成された自分だけの世界の見方であり、同時にそれによる世界の見え方であるということ。
そこにはすべてがあり、すべてが自分の意のままの世界なのだ。見たい物に目を向ければそれは見え、物を掴もうと思えば自分の手は瞬時にそこに伸びる。思いは言葉となって自然に口を出るし、困難に直面しても、ものごとが自分の思い通りにならないだろうという思い通りに状況は動く。なんという豊かな王国、なんという「ひとりよがりの王国」なのだろう。
自分が現実だと思い、皆と共に生きていると信じていたこの世界が、「ひとりよがりの王国」であると気づくことは必要だ。自分がその国の支配者であり、しかも唯一の住民である、この自分だけのための子宮のように優しい「王国」。しかし目に見えない国境で自ら世界を閉じていた事に気づくのは恐ろしいことでもある。
いったん気づいてしまえば子宮口が開き、胎児は産道を回転しながら新しい次元世界に向けて進みゆかねばならない。後戻りは許されないのだ。「ひとりよがりの王国」の住民である自覚が一度なされたら、自分だけのユニークな世界の見方を否定せず、他者との信頼に基づいた新たなる世界観獲得の努力がなされなければ、それこそ絶対的孤独であることを知る。
ではこの王国の外に共通普遍の世界観というものはあるのだろうか。宇宙を貫く絶対的真理というものが誰にも保障されているのだろうか。「全知全能の神こそが唯一普遍の真実である」「偉大なる将軍様のなさることは絶対です」「数学は宇宙を貫く絶対的言語だ」などの様々な言明。それらは「王国」の中では真実としてなんら問題はない。だがひとりよがりの王国を抜け出れば、万民共通の真理というようなものはない！というのがひとつの健全な世界観であろう。
しかしそれを踏まえた上での、さらなる真理探究は価値があり、新たなる意味と未来を創るに違いない。まさにそここそが新たなるスタート点なのだ。「ひとりよがりの王国」にありながら、同時にその外でも生きながらの探求。
ひとりよがりの王国を超えて(１４)
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