 共に理解し合うためには、まず互いに相手と自分の世界観が異なるということを認め合うところから始まる。相手の偏見や誤解や曲解から理解しあえないはがゆさや悲しさを感じることがある。しかし私もまた同じような想いを他者にさんざん味わわせてきたことだろう。相手の言っていることが常識や公平さから外れているということを、やんわりと指摘してもなかなか分からない。
他人のことはよく見えても、自分のことはなかなか見えてこない。そうこうしているうちに、自分の世界観のずれを無言の内に指摘されていることに気づき、口を閉ざさざるをえなくなる。自分もまたひとりよがりの王国の主なのだ。コミュニケーションとは幻想なのだろうか。
コミュニケーションに必要なのは、何よりもまず相手に対する信頼と敬愛だ。それがなくて恐れや不安があるだけならば、分かち合うものは何もなく、傷付け合い奪い合うばかりとなるだろう。常識や慣習や論理性も信頼や敬愛がなければ、自他を縛り過去に閉塞させようとするものでしかなくなってしまう。
原理主義・教条主義の機械的適用は、未来を制限するコミュニケーション最大の障害の１つだ。もちろん原理や教条を否定しているのではない。それを扱う私たちの態度を論じているのである。共通のものと勝手に思い込んで用いると、常識や慣習や論理性もまたひとりよがりの王国のローカルな法律なのである。究極的に言えば私たちが知覚する次元空間や時間や宇宙論もまたひとりよがりの王国そのものである、ということを理解する必要があるだろう。
ひとりよがりの王国を超えて(４)
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